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「7月末にもメタパラクレゾールの製品在庫が払底するだろう。会社の存亡が懸かる大事な時期だというのに、泣き面に蜂だ」(大手半導体メーカー幹部)
業績不振にあえぐ国内半導体産業に、新たな試練が訪れている。
発端となったのは、4月22日に発生した三井化学岩国大竹工場の爆発・火災事故である。死傷者26人が犠牲となり、損傷した近隣家屋が999軒に及んだ甚大な事故であるだけに、原因究明調査に時間を要するのは確実。発生から1ヵ月が経過してもなお、操業開始の見通しは立っていない。
同工場では約20品目の製品が生産されていたが、中でも供給難が懸念されているのが、「メタパラクレゾール」と呼ばれる基礎化学品である。メタパラクレゾールは、半導体の製造工程に不可欠なレジスト材料(拡散工程で使用される感光性樹脂)の原料として用いられているほか、液晶パネルの製造工程向け、汎用向け(石けん、ビタミンE)と用途は幅広い。
事故発生の報に、半導体業界関係者に激震が走った。三井化学のメタパラクレゾール市場全体における世界シェアは2割程度なのだが、半導体用途に限れば世界シェア7~8割を占める世界ナンバーワンの製品であるため、急な代替品調達は難しいからだ。
在庫が払底する「Xデー」に向けて、半導体メーカーの製造現場は混乱している。「代替品を用いた新たなレジスト材料の使用を検討し、半導体供給には支障が出ないと顧客には説明している。だが、間に合うかどうかはわからない」(半導体メーカー幹部)と悲鳴が聞こえてくる。