前回の第3回では、ローテクでありながらも創造性の高いテクノロジーが途上国のマーケットで非常に必要とされており、さらにはそれが日本のモノづくり復活の鍵となるということを紹介した。
さらに今回は、こうしたテクノロジーを途上国の貧困層が暮らすラストマイルに届けると、どのような「変化」がおこるのかについて、コペルニクが行なっているプロジェクトの調査結果を紹介しながら考えてみたい。
コペルニクでは、できる限り多くのプロジェクトにコペルニク・フェローや大学院生チームを派遣し、われわれがテクノロジーを届けることでどのような変化が起こっているかの調査、つまり、「テクノロジーのインパクト評価」を行なっている。実際に行なった数ある調査結果のなかから、東ティモール、インドネシア、ケニアでの事例を紹介したい。
子どもが水汲みから解放される
水汲みは主に子どもと女性の日課だ。毎日、プラスチック容器で5~10リットルの水を汲み、これを頭の上に載せて家と水源を何度も往復する。1日の大半が水汲みに費やされている人も少なくない。
そこで2010年、コペルニクはこの負担を軽減させるために東ティモールの現地パートナーを通じて、最貧県オクシの30世帯を対象に「Qドラム」を導入した。このQドラムは、50リットルの水を一気に簡単に運べる優れモノだ。
コペルニク・フェローの調査によれば、Qドラム導入以前は、1世帯あたりの水汲みに使う時間が1日平均81分だったが、導入後は50分へと40%近く減少した。なかでも、子どもへの負担が激減したことが大きい。
導入前は、30世帯のうち、半分の15世帯で2人の子どもが毎日水汲みを行なっていた。しかし導入後は、2人の子どもが引き続き毎日水汲みを行なっている世帯は4世帯にまで激減。全く子どもが水汲みをしていない世帯は、9世帯から14世帯に増加した。その結果、1世帯で水汲みをする子どもの数の平均は、1.23人から0.67人へとほぼ半減している。
Photo:©Kopernik