しかし、ソフトウエアの自動化など技術が発展する中で、画像診断など患者の直接的な交流がいらない分野は全自動化が可能という指摘もあります(マーティン・フォード『ロボットの脅威』)し、想像力に乏しい私には「まだ見ぬ社会」をイメージするのは難しい面があります。そこで、以下はいくつかのSF映画を通じて、社会保障の将来像を考えます。

 まず、日本だけでなく、世界中にファンが多い『スター・ウォーズ』シリーズです。1980年公開のエピソード5『帝国の逆襲』では、帝国軍の基地に乗り込んだ反乱軍のルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)が帝国軍のダース・ベイダー(デヴィッド・プラウズ)と戦った際、右手を失う場面があります。

 その後、ルークは右手を移植する手術を受けますが、手術を実施しているのはドロイド、いわゆるロボットです。素人の感覚で見ると、「極めて繊細な技術が必要な手術がどこまで自動化できるのか」と感じるのですが、人間と同じように機械が学ぶ「機械学習」を通じてAIの「経験」「知恵」が増せば、難しい手術も可能になるのでしょうか。

患者の意思や思いなどを
機械が代替できるのか

『スター・トレックVIII ファースト・コンタクト』ジャケット『スター・トレックVIII ファースト・コンタクト』リマスター版スペシャル・コレクターズ・エディション DVD:1429円+税 発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

 一方、アメリカでは『スター・ウォーズ』と並んで根強い人気がある『スター・トレック』シリーズはどうでしょうか。1966年にテレビのドラマシリーズが初めて作られた後、映画が13本、テレビドラマが6シリーズ作られていますが、ここでは映画に限定して話を進めましょう。

 過去の映画を見ると、『スター・トレック』では必ず人間の医師が登場し、「トリコーダー」と呼ばれる機械を使っています。これは大気の成分や動植物の構造物などをスキャンできる万能機械であり、医療用としては初期診断に使われています。

 例えば、映画第8作の『ファースト・コンタクト』では、映画の舞台の23世紀から21世紀の地球にタイムスリップした乗組員が現地調査に入った際、 微量の 放射線に汚染されていることが判明します。そこで、女性医師がトリコーダーで乗組員の体の変化や影響を計測し、緊急性が高い患者については、看護師やスタッフが詰めている手術室に転送するシーンがあります。一方、汚染が軽微だった艦長に対しては、「ハイポスプレー」という針のない注射器を首に当てることで応急処置を講じています。

 こうした描写を見ると、機械学習の発達を通じて、数値化できる医療行為が機械に代替されたり、軽症者を気軽に手当てできる機械が普及したりする日が訪れるのかもしれません。