差し迫った終末期の亡くなる1週間前の「痛み」を尋ねると、「とてもひどい」「ひどい」を合わせると27%で、1ヵ月前とあまり変わらない。だが、「まあまあ」「少し」を加えると63%にもなる(図2)。30%前後ものがん患者が痛みから解放されていない上、亡くなる1週間前にはさらに多くの患者が痛みを感じている。まだまだ緩和ケアが浸透していないことが鮮明になった。

「痛み」が少ない療養場所は、
ホスピス・緩和ケア病棟より「介護施設」

 死亡場所別に、亡くなる1ヵ月間の答えを見ると驚くべき事実が明らかになる。「身体の苦痛」と「痛み」は、共に介護施設が最も少なく、次いでホスピス・緩和ケア病棟、そして自宅、最後に病院の順だ(図3)。

 ホスピス・緩和ケア病棟はがんの終末期患者が緩和ケアを受けるための専門施設である。病院よりはるかに専門性が高い。それなのに、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの一般的な介護施設よりも痛みの処置が低いのはどうしたことなのか。

 同センターは「自宅や高齢者施設にいてはどうしても痛みが取れない重度者が病院やホスピス・緩和ケア病棟に来る。患者の状態が異なるためではないだろうか」とその理由を説明する。確かに一因だろう。だが、ホスピス・緩和ケア病棟は痛みを除くのが本来業務である。高齢者施設とは大違いのはず。

 高齢者施設には施設が契約した地域の医師が医療を担う。診療所の医師が訪問診療で通うことも多い。地域医療にいそしむ医師たちは、患者の自宅への訪問だけでなく、急増している有料老人ホームや特別養護老人ホーム、グループホームなど住宅系施設にも積極的に訪問するようになってきた。

 自宅にいた要介護者がこうした施設に「引っ越す」と、引き続き訪問診療を続けるからだ。本人や家族が望めば、施設専属の医療機関でなく、地域の在宅医が訪問できる。

 同じ高齢者を長年診ていると、生活の延長線上に死が訪れることがよく分かる。終末期への過程がしっかり把握できる。穏やかな暮らしの先に、穏やかな死がある。そのために痛みの除去、すなわちモルヒネの処方など緩和ケアの知識、技術が高まる。

 自宅への訪問診療では、患者と医師の間の信頼関が醸成されるとよく指摘される。近年、施設の個室化が広がり、利用者には「第二の自宅」となり、同様の心情が湧いてくる。それがこの数字によく表れている。