筆者としては、皆が70歳まで働いて70歳から年金を受け取るようになれば、年金財政は破綻しないし、個々人の老後の備えも可能だと楽観的に考えているのだが、少数派だろう。

 個々人の老後不安は、本来ならば景気認識とは別のものなのだが、不安な気持ちでいると景気が暗く見えてしまうというのが人間の心理というものだ。

 こうした悲観的な見方を増幅しているのが、経済評論家やマスコミの悲観的なコメントだ。「○○が心配だ」「○○のリスクもある」というのが評論家やマスコミは好きなので、そうした話ばかり聞いていると、そんな気になってしまうのだ。

 問題は、こうした悲観的な物の見方が、設備投資や消費に悪影響を与えて、実際に景気を悪化させてしまうという「自己実現的な予言」になってしまうということだ。

 個々人や個々の企業は、暗い将来が予測されれば消費や投資を抑制するのが「正しい」行動だが、皆が正しいことをすると皆がひどい目に遭うという「合成の誤びゅう」が起きてしまっているのだ。

 今回、ようやくデフレマインドや合成の誤謬の悪影響を乗り越えて、景気が絶好調となっているのだから、これを機に人々のデフレマインドが少しずつ緩んでいき、消費や投資が素直に活発化していくことを強く期待する。

成長率が低いのに
労働力不足である理由

「景気のプロ」たちの間では、景気の良しあしを判断する材料として実質経済成長率(GDPの増加率から物価上昇率を引いた値。単に成長率と呼ぶこともある)を用いる場合が多い。景気討論会などでは、成長率の予測が景気の予測として用いられることもある。「成長率が高いときは、企業が大量の物を作るために大量の人を雇うから景気はよくなる」というのが基本的な考え方だ。

 だが、今は成長率が平均1%台と決して高くないのに、労働力不足だ。なぜなのか。1つには少子高齢化で現役世代人口が減っているからであり、もう1つには労働集約的なサービスに対する需要が増えているからだ。労働集約的なサービスが増えている理由は、高齢化とデフレ脱却だと思われる。