官邸への
忖度はありえない

 さて、この不正、何が問題なのか、何が原因で、どうすれば解決につなげることができるのか、再発防止という掛け声は聞こえてきても、具体的な中身はまだまだ聞こえてこないように思う(自民党では行政改革推進本部に統計改革推進検討チームが設置されたものの、検討はまだ始まったばかり。また、2月4日の衆議院予算委員会では、自民党の小泉進次郎議員が本件を厚生労働省改革と結びつけて、その必要性を訴える質疑をしていたが、端的に言って無関係であり、的外れな議論である)。

 そうした中で、野党は、早くもこの不正は官邸への忖度(そんたく)によるものだとか、「アベノミクス偽装」なる言葉まで編み出して、アベノミクスの効果を大きく見せ、喧伝(けんでん)するために行ったものだと位置付けようとしているようである。

 しかし、この不正が始まったのは平成16年であり、当時は小泉政権。官僚の忖度を生む原因とも結びつけられることの多い内閣人事局もまだ設置されていないし、公務員制度改革もまだ道半ばの段階である。

 従って、アベノミクスや安倍官邸への忖度と結びつけるのは少々無理があろう(アベノミクスうんぬんと結びつけるのであれば、むしろサンプリング方法をローテーション・サンプリングに変更したことの方が当てはまる可能性があるのではないか?)。

 総務省で政府の統計制度の所管部局(統計基準担当政策統括官付。当時は統計局統計基準部)にも在籍していた筆者の目からは、なぜあえて低い数値を出そうとしたのかについて調査し、解明することは大前提としても、こうした不正がうやむやにされ、むしろ当然のごとく行われ、その指摘も解決も先送りされてきたことを考えると、(1)厚生労働省の統計担当部門の在り方や人材の質、(2)統計法に規定する総務大臣の権限が不十分であること、に問題の根源があるように思われてならない。

旧厚生省と旧労働省で異なった
統計担当組織の位置付けや扱い

 厚生労働省は、ご承知のとおり、中央省庁等改革により旧厚生省と旧労働省が統合されて出来た官庁である。

 旧2省はそれぞれ統計担当部門と所管統計を持っており、毎月勤労統計は旧労働省所管の統計の1つである。旧労働省の統計担当部局は労働大臣官房政策調査部であり、管理課、総合政策課、労働経済課、産業労働調査課、統計調査第一課及び統計調査第二課が置かれていたが、全てが統計を担当していたわけではなく、おおむね半分程度が統計の専担組織であったようである。このうち毎月勤労統計を担当していたのは、統計調査第一課だった。