一年中クーポン券を配るブランド戦略は正しいか?

 例をあげましょう。年中クーポン券やサービス券を配っているラーメン店がたくさんあります。しかし、クーポン券やサービス券を使ってお客様の満足を高めようとするラーメン店は、正しい「ブランド化」を行っているといえるのでしょうか。

 あちこちの美味しいラーメンを食べ尽くすほどのラーメン通になると、舌がとても肥えてきます。そういう人が増えれば、値下げ合戦をしているラーメン店は、実際には400円の価値しかないものに600円のニセの値札をつけている、あるいは、600円以下で売ると赤字になるのに無理して400円にしているか、どちらかではないかということに気づくはずです。当然、どちらの店も、数年もすれば事業として苦しくなるでしょう。

 価格というのは本来、顧客に提供する「価値の大きさ」を表していると考えるのが自然です。値下げをしないとお客様が集まらないのは、味やサービスが「価格に見合っていない」(コスパが悪い)ということです。このラーメン店は、味やサービスを価格に見合ったものに上げるか、あるいは価格を味やサービスに見合ったものに下げるかしなければ、継続的にお客様をつかむことはできません。継続的なファンがいなければラーメン店の経営はいずれ苦しくなることは目に見えています。

 加えて言うなら、競争相手の存在を無視してはいけません。お客様からみれば、味やサービスは常に他のラーメン店(あるいは、他の飲食店かもしれません)との比較にさらされており、競合店が同じレベルの味やサービスになれば、終わりのない価格競争に陥ることになります。

 したがって、「味やサービスでは勝てないが、価格で勝負に出よう」という場合、競争相手のラーメン店が真似できないようなコスト構造を持っていなければなりません。たとえばマクドナルドのように、全国津々浦々に店舗を大量に構え、原材料の大量購買によって圧倒的に低い原価で材料を調達するなど、ビジネスモデルの構造改革をセットで行う工夫が必要となるのです。