出版される本のうち約25%が児童書といわれる中国の出版市場。児童書に求められるコンテンツは、教育の価値観とともに変化していると、中国初の国際アンデルセン賞作家・曹文軒氏と国際児童図書評議会(IBBY)会長の張明舟氏は来日時のインタビューで語った。中国の巨大な児童書市場は、一体子どもたちをどこに導こうとしているのだろうか。
中国の出版市場は
児童書が牽引している
人口の多さによる競争社会や一人っ子に対する親の期待と、子どもの教育にかける親の情熱は日本以上といわれる中国。そして、経済成長で懐に余裕の出てきた中国では、教育に不可欠なものとして、親の児童書への関心も高まっている。
それを実感するのが、2013年から上海で毎年開催されている「中国上海国際児童書展(CCBF)」だ。0~16歳の子どもに向けた本やデジタルコンテンツの版権取引と一般向け書籍販売を行う展示会で、年々その規模を拡大している。
2018年の第6回は11月9日から11日の3日間で、出版関係者と一般来場者合わせて約3万4000人の来場者を記録し、第1回目の2万人から1.7倍に増加した。
特に目立つのが会場で割引される本を買い求める一般来場者だ。訪れた会場では何十冊も本をカゴに入れ、レジで数万円支払う親の姿も多い。
また同展会場では海外からの出版関係者を対象にしたセミナー「驚きのシナリオで広がる中国の児童書出版市場」が開催された。「出版物および出版業界の概観2017」にまとめられたデータから、中国における児童書市場はこの10年間で急速に拡大し、書籍市場全体に占める割合は12.07%から24.6%とほぼ倍増、児童書は中国で最も期待される書籍販売の推進力となるだろうと報告された。
そして、これからの児童書は学習教材的な要素よりも、子どもの能力開発に役立つ個性を伸ばすようなものが求められ、信頼できる出版社やブランド、作家といった本の付加価値が重視されるようになるだろうと、教育に対する価値観の変化も予測していた。