解決に際して、著者らの会社(もともと37シグナルズという名前だったが、今はBasecampに変更したらしい)が出した結論はシンプルだ。『これを解決する方法は、もっと長く働くことじゃない。つまらない仕事を減らすことだ。生産性を上げるのではなく、無駄をなくすことだ。邪魔が減れば、ずっと抱えていた不安が消え、ストレスを減らすことができる。』なるほど無駄を減らせばいいのね、でもどうやって? というのが本書で語られているおもな内容になっている。

具体的な内容をざっと紹介する

 全体の構成としては、はじめにとおわりにの他は、ざっと五章に分かれている。

 最初の「大志は抑えて」では、主に精神論というか、物の考え方について。「がんばりすぎるな」とか「世界を変えようと思うな」など、ここではバカらしいほど愚直な考え方が語られていく。「世界を変えようと思うな」ってのはなかなかいい言葉だ。

 次は「自分の時間を大切に」。ここでは主に、「個人の時間を守る」ことに重点を置いた仕組みが紹介されている。たとえば、質問について。誰でも自由に質問できる環境だと、質問された側は作業が中断されるから、事前に「この時間は質問していいですよ」というオフィス・アワーを誰もが個別に設定して、みんなその時間にしか質問しないようにするなど、非常に参考になる。

 凄いな、と思ったのは「あえて不便にする」という発想。特にIT企業の多くは仕事のスケジュールをGoogleカレンダーなどで管理していると思うが、著者らの会社では個人のカレンダーの日程を共有しないという。だから、あの人と会議をしたいなと思っても相手のスケジュールはわからず、ちょっと暇な時間を教えてくれませんか? と聞く面倒な手順を踏まなければならない。しかし、その面倒さこそがいいのだという。『なんの苦労もなく誰かのカレンダーに予定を書き込めるのなら、人びとの時間が分割されていくのも無理はない。』他人の時間を借りるのだから、その手続は面倒な作業であるべきだということで、言われてみればごもっともな話である。

 第三章は「組織文化を育てる」で、採用手法や上司のふるまいについて。たとえば採用については、履歴書など捨て去って、面接では人柄やチームに新たな風を吹き入れてくれるかを判断し、その後賃金を払って1週間ほど実際に仕事をふってみるのだという。彼らの会社は福利厚生が相当しっかりしていて(3年に1回1ヵ月の有給があり、勤続一年以上の社員は特別な有給が与えられ、その時の旅行代などは家族のものも含めてすべて会社から払われるなど)、100人に満たない超少人数運営+フルリモートというそもそもの仕組みがあるからこそそうした採用活動ができるわけではあるが、彼らは「あえて拡大しない」戦略をとったことでそれを可能にしているのだ。