20世紀のものづくりの文化を次の世代に残したい
本田:私が書いた『大富豪からの手紙』の中で、祖父が孫に残す最後の手紙が「運命」です。
祖父は手紙の中で、「『悪いと思うことが起きるたびに、これでひとつネガティブな要素が減った』と考えられるかどうか。不快なことが起きたときに、『これから運命は、いい方向に向かうんだな。ありがたいと、頭の中を切り替えられるかどうか』それができれば、主体的に自分の運命を選び取っていくことができる」と書き残しています。北原さんは、「運命」をどのように捉えていらっしゃいますか?
北原:運命というのか、役割というのか、ミッションというのかわかりませんが、僕の場合だと、「20世紀の日本の生活習慣やものづくりの文化を伝え、次の世代に残していく」ために生かされているのかな、と思うことがあります。
本田:私は10代の頃から、「運命」についてずっと考えてきました。「人生はもとから決まっているのか、決まっていないのか?」「運命が最初から決まっているのなら、人間は努力する意味があるのか」、そんなことをずっと考えてきました。
北原:答えは見つかりましたか?
本田:あくまでも私の仮説ですが…、
・「宿命」は、宿る命。自分が生まれた時に決まっているもの
・「運命」は、運ぶ命。どうやって生きるかは自由に決められる
と考えています。そして、「宿命と運命の境界線は、自分で引くことができる」と思っています。なので、どこにその線を引いても、それが「その人の中での正解」なのではないかと考えています。
だからこそ、人間には「人生を変える選択肢が、毎日、与えられている」と感じているんです。
北原:たしかに待っていてはダメで、自分から働きかけなければ、運も、運命も、変わらないと僕も思いますね。
本田:北原さんのこれからの夢があったら教えていただけますか?
北原:いつか、「自分のコレクションをすべて展示できる博物館」をつくりたいですね。もし、僕の希望に近い博物館を建ててくれるという人が現れたら、僕は喜んで、全コレクションを寄贈してもいいと考えているんです。
(第4回に続く)