鉄道会社が大混雑覚悟で
間引き運転を行う理由

 間引き運転とは、鉄道会社が「通常の○割程度の運転本数」など案内するように、一部の列車を運休させて通常のダイヤよりも運行本数を減らすことだ。ただでさえ混み合う雪の日の列車本数を減らすのだから、ホームも車内も大混雑になる。駅は入場規制が行われ、電車に乗るまでに1時間の大行列ということも珍しくない。

 鉄道会社はなぜ、大混雑を承知の上で間引き運転を行うのか?その理由は、都市部の過密ダイヤにある。

 都市部の鉄道ではラッシュ時には2~3分間隔の運転をするために、信号機が距離と速度に応じた緻密な制御を行うことで、列車間隔を確保している。ところが雪に濡れると滑りやすくなるレールの影響で、電車の加速性能が鈍り、ブレーキの利きが悪化すると、この曲芸的なダイヤが成立しなくなってしまう。

 それどころか最悪の場合、車輪とブレーキの間に雪が入り込んでブレーキが効かなくなり事故に至る。実際に、1986年3月の西武新宿線田無駅、1995年12月のJR宝塚線藍本駅、2002年1月の名鉄羽島線新羽島駅、2014年2月の東急東横線元住吉駅と、都市部通勤路線での雪に起因する衝突事故は過去10年に1度のペースで発生している。

 このような事故を防ぐには、雪道の自動車と同様にスピードを落とし、車間距離を確保して運転することが肝心だ。東急電鉄は2014年の事故以降、積雪量に応じて通常の最高時速110キロから、時速60キロまたは時速40キロまで減速する最も厳しい運転規制を実施している。

 間引き運転のもうひとつの理由は、駅と駅の間で立ち往生することを防ぐためだ。ここには20年前の苦い教訓がある。

 1998年1月8日、都心に15センチの積雪をもたらした大雪の影響で、夕方のラッシュ時にJR各線はポイント故障や架線切断、パンタグラフ故障などが続発する事態となった。東海道線は4本の列車が満員の乗客を乗せたまま、駅間で4時間以上立ち往生する事態となり、JR東日本は大きな批判を浴びることになる。

 この騒動以降、遅延や運転見合わせによる駅間停車を防ぐために、降雪時はあらかじめ本数を減らす間引き運転が徹底されるようになった。かくして、列車が混雑し、混乱に陥ると分かっていても、鉄道事業者はあえて間引き運転を行っているのである。