『定額引き出し』対『定率引き出し』

 消費額が徐々に減少していくことが正しいならば、常に同じ金額を引き出す『定額引き出し』はこの考え方にはマッチしないと整理できます。一方、保有資産に対して常に一定の比率で引き出す場合(『定率引き出し』)には、資産の減少に伴って引き出し金額が減っていくため、この考え方にマッチしていると言えるでしょう。したがって、ライフサイクル理論を論拠とすれば、『定率引き出し』のほうが正しい引き出し方法になるわけです。

4%は妥当なのか?

 次に引き出し率について考えてみます。すぐに疑問に思うのが、老後に必要な生活費やそれを賄う年金額、そして保有資産やリスク許容度などは個人によってまちまちなのに、なぜ4%が最適な引き出し率として使われているのか、ということだと思います。4%としている背景はいろいろあるようですが、普通に考えれば、最適な引き出し率は個人によって異なるというのは容易に想像できるでしょう。では、個人別に変えなければならない場合、何を考慮しなければならないのでしょうか?まず市場リスクに対する許容度が人それぞれであるように、長生きリスクに対する許容度も人それぞれであるため、それを考慮する必要があります。つまり、長生きリスクが心配な人は、若いときから消費額および引き出し額を抑えるのが適切になります。ただ、個人的にこれより大事だと思う要素は、終身年金をどのくらい受給できる状態なのか、ということです。より多くの公的年金を受給できる人は、長生きリスクの大部分が公的年金によってカバーされているため、保有資産で長生きリスクをカバーする必要がなくなります。ですから、このような人は引き出し率を高くすることで老後の若い時期に多くのお金を引き出し、充実した人生になるように消費してもよいのです。一方、公的年金の受給額が低い人は、公的年金では長生きリスクが十分にカバーされていないため、保有資産がなるべく長持ちするように、引き出し率を低くするのが最適となります。

人生のQuality of Lifeを高めるには

 公的年金の金額により、最適な引き出し率は変わってくるため、4%が万人に当てはまるわけではない点には注意が必要です。では、より多くの金額を保有資産から引き出せるようにするには、どうしたらよいのでしょうか?答えは公的年金の受給額を上げることなのですが、「そんなことは今さらできないよ」と思うオヤジも多いかもしれません。そうではないのです。公的年金には繰り下げ制度があり、受給開始を65歳から最大70歳まで遅らせることができます。遅らせることで毎月0.7%の年金が増額されるため、5年の繰り下げで年金額が42%増額されます。長生きリスクへの対応は公的年金に任せて、保有資産は老後のQuality of Lifeの向上のために適度に使うというライフスタイルを送ることで、個人の満足度が向上するのみならず、消費を通じて日本経済の活性化にも貢献できる「オヤジ」になれるのではないかと思います。ぜひ、上手に繰り下げ制度を活用し、4%以上の引き出し率で、豊かな老後を送ってみてはいかがでしょうか?

今回の川柳
繰り下げで 質を高める 老後かな

(アライアンス・バーンスタイン株式会社 AB未来総研 所長 後藤順一郎)

※本記事中の発言は筆者の個人的な見解であり、筆者が所属するアライアンス・バーンスタイン株式会社の見解ではありません。