実際、多くの人は、通信の業界やその仕組みについて詳しい知識を持っているわけではない。したがって、変更したことによって問題が起きることに対して不安を持っているのは事実だろう。実際に格安スマホへ変更することが良いか悪いかは別として、変更が進まない理由はこの辺りにあるといえるだろう。

株を損切りできないのも
「現状維持バイアス」

 現状維持バイアスは他にもたくさん例がある。例えば株式投資においてもこれはよく見られる現象だ。

 特に投資した銘柄の株価が下落したときに、現状維持バイアスが頭をもたげてくる。本来、株価が下がる理由は大きく2つに分けられる。1つはその会社の業績や財務内容が悪化した(する)とき、そしてもう1つはその会社自体には何も変化はないが、市場全体の地合いが悪化したり天変地異や政治リスクが起きたりして、市場全体がいわゆるリスクオフの状態になるときだ。

 後者の場合は、あまり短絡的に考えて慌てて売るのではなく、じっくり保有した方がいいが、前者であれば、早めに売却することで損失が大きくなることを防げる場合も少なくない。

 ところが多くの場合、投資家は逆の行動をとりがちだ。

 東日本大震災やイギリスのEU離脱の国民投票のように、予想外の大きな出来事が起きたとき、先が見えない不安からとりあえずいったん売っておこうという行動を取る投資家が増える。特にそういう場合は、比較的短期間に下げ幅が大きくなるケースが多いため、一層、不安心理が増幅される。

 一方、業績の悪化といった場合、株価が急落するとは限らない。少しずつじりじりと下がっていけば、多くの投資家は損失回避の心理から「今売ると損が確定してしまうので、しばらく様子を見よう」となりがちだ。