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普通の人が宇宙旅行できる時代がついに来る!?
民間企業「スペースX」宇宙船ドラゴンの偉業

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第199回】 2012年6月7日
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 スペースXを創設したマスクには、自分の手で宇宙産業を変えたいという目論みがあった。これまでロケットや宇宙船は国家事業として運営されてきた。だが、アポロで世界をリードしたアメリカも、スペースシャトル時代には事故や資金難に悩まされ、ついに2011年に計画が終了されることになった。

 宇宙ステーションに物資を輸送するなどの作業は、その後アウトソースされることになり、それを担う2社のうちの1社として選ばれたのがスペースXである。同社創設に際して1億ドルを投資したマスクは、官僚構造もなく、ほとんどを自前で製造できる低コスト型宇宙開発企業を標榜している。「それが安全性を犠牲にすることは決してない」というのが彼の主張するところだ。同社は現在、宇宙船の有人化にあたって緊急時の脱出方法を確保するための設計などを進めているところだ。

NASAとの巨額契約を前に
スペースXの未来を危惧する声も…

 スペースXは、マスク自身を含めた投資家からの資金に加え、NASAとの契約による資金で運営している。今回の貨物輸送を含む飛行のために3億9600万ドルを受けているが、これが成功したことによって、今後12回の飛行を対象にした16億ドルの契約をNASAと締結できる可能性も高くなった。さらに同社は、軍事衛星を飛ばすなど、国防総省との契約獲得のためにも積極的に働きかけていると伝えられる。

 しかし、潤沢な資金を背景に快走するスペースXの未来を危惧する人々もいる。国の下請けに成り下がって、膨大な官僚主義に絡め取られるのではないかというのだ。

 宇宙産業もシリコンバレーのような方法論で実現できることをアピールしてきたマスクだが、国が定める基準を満たし、官僚主義をくぐり抜けようとするうちに、その落とし穴に落ちてしまう危険もあるというわけだ。スペースXは、数年後にIPOを、さらにその数年後にも一般人宇宙旅行を実現しようとしていると言われる。同社の快走が、このままうまく続くかどうかに注目が集まる。

 民間企業による宇宙開発はすでに競争激化の兆しが見られる。マイクロソフトの共同創設者のポール・アレン、アマゾンCEOのジェフ・ベゾスも、それぞれに宇宙ベンチャーに投資している。もちろん、ボーイングなどの既存大手企業も、この機会を見逃そうとはしていない。

 それでも、イーロン・マスクという人物の動きだけを見ても、IT、電気自動車、環境産業、そして宇宙産業と、アメリカが新しい産業を興すうまいサイクルを手にしていることが伺われる。日本は、そこにこそ注目すべきなのかもしれない。


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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

ビジネスモデルの破壊者たち

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