貧困の問題、特に「住」の貧困問題が存在している地域では、災害による被害が大きくなる。そのとき、失われるのは住居だけではない。あらゆるインフラが再建や再構築の必要に迫られる。災害で住まいを失った人々が同じ場所・同じ地域に戻ることは、少なくとも数年間は困難だ。

 そこで、遠く離れた仮設住宅などに転居することになる。しかし、災害以前に数多く存在した「生活保護で住める住居」は、いったん失われると復旧しない。家主に、再建する余力がない場合もある。再建されて新築アパートとなると家賃が高額すぎるため、「生活保護で住める住居」ではなくなる。

 転出すれば、高い確率で戻れなくなる。そこに留まることのできた人々も、時間が経過すれば高齢になっていく。「仮設住宅での孤立死」「阪神淡路大震災被災者の高齢化」といったキーワードを脳裏に浮かべながら、長田区の人口減少のグラフを眺めれば、了解不可能なポイントは全くないだろう。

 災害は、人や地域を選んで襲ってくるわけではない。しかし、被害の実態や復旧の進行には災害以前の状況が反映される。もともと経済的に脆弱さを抱えた人や地域は、大きな被害を受けやすく、回復の速度も遅くなりやすい。ゆっくりでも回復すればよいのだが、回復せず「ジリ貧」となる場合もある。

 神戸大学医学部教授として阪神淡路大震災を経験した精神科医の中井久夫氏は、時間と共に拡がる格差を「ハサミ状格差」と呼んだ。また古くから、「マタイ効果」という言葉がある。これは、新約聖書の「マタイによる福音書」の中にある「富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなる」という記述から取られた言葉だ。2000年前にはすでに、放っておけば格差は拡大するものだったのだ。

「震災で成長」という
神戸市西区の不思議

 本記事の冒頭では、1995年の阪神淡路大震災後の人口の推移を、以下の5パターンに分類した。

(1)震災後、人口が減少し続けている(例:長田区)
(2)震災後、人口が減少し、そのまま推移(例:兵庫区)
(3)震災後、人口が回復し、そのまま推移(例:神戸市全体)
(4)震災後、人口が回復し、さらに増加(例:中央区、東灘区)
(5)震災後、人口が急増し、そのまま推移(例:西区)