情報過多な現代人のための
もっとも手軽なマインドフルネスの方法

 日本にバレットジャーナルが紹介された当初から、発案者のライダー・キャロル氏がADD(注意欠陥障害)(※)であることは伝えられていた。

 そして日本でもメンタルヘルス上の問題を抱える当事者によるライフハック系書籍がこの数年登場していた。それはたとえば『「うつ」とよりそう仕事術』(酒井一太・著)であり、最近では『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』(借金玉・著)などもあった。

 だから『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』は、そういう文脈でも捉えられるものでもある。そして実際、本書は著者の自らの形質の告白をブロローグとして始まっている。

 同時に、これは情報過多でつねに忙しい感覚を持たざるを得ない現代人にとっての、一つの処方箋でもある。これはADD、ADHDの診断名が下された人たち以外の問題でもあり、現代に生きる多くの人々に役立つメソッドたり得るだろう。

 本書でも指摘されているとおり、現代は情報の量が爆発的に増えており、そのことで生産性が逆に低下している。1人の人が注意を払うべき情報の量が増えたことで、脳がキャパシティを越えた付加がかかった状態になりがちだ。

 考えようによっては、この事態は、ADHD的なコンディションに人災的になっているとも言える。だからこそ、バレットジャーナルは、普遍的な有効性をもつ可能性がある。

 前述の“きらきらバレジャ”はその端的な例とも言える。若年層の女性にもっとも親和性が高いのはiPhoneを代表とするスマートフォンであるにもかかわらず、わざわざ紙のノートを使っているからだ。

 ともあれ、本書には今までバレットジャーナルをめぐって日本で知られてきたこと以上の情報が多数含まれている。それは前述のように情報過多な現代における、いわば豪雨のような情報をよけながら自分を見つめ直すという、とても今日的な文脈でのそれだ。

 ノート術であり、ともすればきらきらな事例によって女子若年層にはよく知られているバレットジャーナルの原典である本書は、実は現代人が一度は目を通して、日々の生活の過ごし方を考えなおすきっかけともなる、非常に今日的な書籍だといえるだろう。

※注:現時点でのADDは正式な診断名ではなくADHDと総称されるようになっているらしい。詳細は、DSM-5参照。

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