日本で独自に発展する「バレジャ文化」
“きらきら層”に原典を伝える意味

 今回の公式ガイド日本語化にともなって期待される役割の一つとして、日本国内で独自に発展したバレットジャーナルの“是正”があると思われる。

 要するにInstagramを検索すると出てくる、カラフルなペンで彩られ、レタリングが施され、イラストがあしらわれ、マステで覆われたような女子力炸裂な例の作者たちが、「原典」に触れることだ。

 これらの例を最初に見たとき、筆者も“(これらが)バレットジャーナル本来の精神から離れている”という義憤のようなものに駆られたことを白状しておこう。ただ次のようにも考えられると思う。

 筆者の義憤はともかく、Instagram上の“きらきらバレジャ”愛好者層の根本に本書があるのは間違いない。そしてこれらの日本のドメスティックな“きらきらバレジャ”は亜流とか邪道ではなく、文房具文化が豊かな日本独自の派生形・発展形なのだと解釈したい。

 ただ、きらきらな層にも本書がとどき、オリジナルな思想に触れることになって欲しい。そのときにきらきらな層は、もう一度バレットジャーナルと自分自身を見つめる感覚に気がつくだろう。

 すでに日本の文房具業界では、バレットジャーナルでの利用を想定した日付や曜日などのシールが一つの市場を形成しつつある。いわばこれらの忖度マーケティング的なアイテム群が登場するのは、日本独特だとも言えるし、それは前述の“デジタルツール的手取り足取り”でもある。同時にバレットジャーナルのハードルを下げ、裾野を簡単に広げる役割を果たしている。

 日本市場の特徴をもう一つ挙げておこう。バレットジャーナル専用、またはそれに使えるものとしての製品の選択肢は、おそらく日本が一番多い。

 ライダー・キャロル氏とライセンス契約を結んでいるロイヒトトゥルム1917や、クオバディス・ジャパンから発売されているクオバディス、ロディア、クレールフォンテーヌの3ブランドのノートなどがそれだ。

 ノンブル(ページ番号)を振ってあるノートも近年選択肢が増えている。バレットジャーナルはまた思想でもある。この思想に沿うように、日本市場に多数存在する高品質なノートを自分の好みで選んでもいい。