今月、「公立福生病院の人工透析治療における選択肢の提示は学会の提言に逸脱しているのではないか」と、東京都と同学会が同病院に立ち入り調査をしたと報道されている。が、もしかしたら、他の病院でも同様のことが起こっているのではないか、筆者はそう推測する。

90年代から
議論は繰り返されていた

 1990年代、患者が医療を受けるときは、医師に言われたままなどの強制力を排除し、本人が自分の意思で治療を決定できるよう、「インフォームドコンセント(十分な治療に関する説明を受けた場合の患者の同意)」と呼ばれる手続きをするよう、医療法に書き加えられた。このため、医師による診察の結果、治療を受けることになった場合、患者は治療の選択肢を示される。

 今回の人工透析が必要な患者とは、糖尿病や高血圧等が原因で腎臓の機能がもう治癒しないほど低下し、体内の老廃物や余計な水分を尿として排出できなくなっている人のことで、治療法は腎臓移植か、透析が必要になる。

 透析には機会を用いて血液から老廃物や水分をろ過し、再び体内に血液を戻す方法(人工透析)、あるいは患者の腹部の膜にカテーテル(細い管)を挿入して透析液を注入することで血液をろ過する方法(腹膜透析)がある。それぞれの治療法のメリットとデメリットのほか、治療法が患者に適応できるかどうかも考慮される。

 かつて国内外の医療者間で「人工透析を勧めないほうがいい患者」に関して議論された時期があった。人工透析は根本的な治療ではなく、いわゆる延命治療の1つと考えられているからだ。延命治療といっても、透析を受けることで日常生活が送れるようになることは、すでにインターネットで複数人が体験記を寄せている。

 さらに、その後、国内で「終末期における診療」について議論が起こった。この時期、日本透析医学会では診療ガイドライン作成時に「透析非導入(透析を始めない)と継続中止(透析とやめる)を検討するサブグループ」も作った。2011年から3年間で13回の会議を開催するほか、毎年、シンポジウム等の公開討論も開き、パブリックコメントも実施した。その結果、2014年、同学会からの「提言」としてまとまっている。