「手書き」のメリットとは

 私が思う「バレットジャーナル」の最大の魅力は、「手書き」のメリットを最大限に活用できるという点だ。

 簡単に説明すると、「バレットジャーナル」はタスクやメモなどあらゆることを箇条書きでノートに書き出していくシンプルなノート術だ。詳細は『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』を読んでいただくとして、ここでは割愛する。

 本の中にもあるが、手書きする──つまり手で文字を書くと、パソコンやスマートフォンで文字を入力するよりも記憶に定着しやすい。

 想像してみてほしい。小学生が新しい漢字を覚える時、手書きで同じ字をノートに繰り返し書いて覚えると思う。パソコンやスマホに文字を何度入力しても覚えられっこない、と多くの人が直感的に感じるだろう。まさに手書きのほうが記憶に定着するという例だ。

 それだけでなく、ペンを持って紙の上で走らせる、という触覚を使う複雑な動きは脳を刺激し、脳の複数の領域を同時に活性化してくれるという。

手書きが結局、いちばん効果的。真の効率性を生み出す究極のノート術

「手書きなんて、時間がかかるし非効率じゃない?」と思われる方もいるかもしれない。しかも「バレットジャーナル」はその日に完了できなかったタスクを翌日に移動する「マイグレーション」という手法を使うため、毎日毎日、タスクを移動するたびに同じ内容を書き写さなくてはならない。したがって、単なる手書きのToDoリストよりも、さらに手間と時間がかかる。

 だが、そこがポイントなのだ。毎日、やらなければいけないこと、やろうと思っていることを手で書き出すことによって、考えていることをすべてはきだし、文字にして整理できる。頭の中で考えているだけだと「あれもこれも、早くやらなくちゃ」と焦って混乱してしまいがちだが、書き出すことによってタスクの内容や量、優先順位を把握できるため、落ち着いてこなしていくことができるのだ。

手書きが結局、いちばん効果的。真の効率性を生み出す究極のノート術

 さらに、できなかったことは再度、翌日に書き写す。もちろん手書きで、だ。それには多少の時間がかかるため、その時間で「これは本当にやるべきことなんだろうか?」と該当のタスクについて考えることができるのだ。

 しかも、毎日マイグレーション(移動)されるタスクについては、毎日考えることになる。毎日書き写しているのに、毎日完了できないタスクには、なにか問題があるのではないか? 今はやるべき時期ではないのかもしれないし、もしかしたらやらなくていいことなのかもしれない。はたまた、実行できない理由があるのかもしれない、というように。

真の効率の良さとはなにか

 自分がやろうとしていることや、やるべきだと思っていることについて、「本当にやるべきなのか?」「なぜやるべきなのか?」を考えるということは、とても大切なことだと思う。

 時間には限りがあって、自分でできることは限られているのに、毎日はやるべきことで溢れている。やるべきだと人に言われたこと、やるべきだと思いこんでいるけれど本当はやらなくてもいいことも、たくさんある。

 限りある人生なんだから、本当に自分がやるべきこと、やりたいことに時間を使いたいと思う人は多いはずだ。だが、ほとんどの人は、目の前のタスクに対して「それが本当にやるべきことなのか?」なんて考えていないと思う。

 それをきちんと考えさせてくれるのが、手書きでつける「バレットジャーナル」というノート術だ。

 キャロル氏の本の中に「手書きが結局、いちばん効果的」という章がある。そこには「手書きは効率が悪いと思われがちだが、真の効率のよさとはスピートが速いことじゃない」「長い道のりが結局は近道だ」という記述があり、大変納得した。日本のことわざでいう「急がば回れ」だ。

 では真の効率の良さとはなにか? 本には「本当に大切なこと、大切な人と、もっと時間を過ごすこと」と書いてある。そしてそのために「バレットジャーナル・メソッド」がある、と。

 私も「バレットジャーナル」を知る前からタスク管理はペンとノートを使い、手書きで行っていた。しかし「バレットジャーナル・メソッド」を知ってから、それまで数日単位で新しいものに移し替えていたタスクリストを、毎日移し替えるようになった。

 すると、毎日のように先延ばしにされているタスクがあるということがわかったし、それがなぜ先延ばしにされているのかを考えるようになった。まさにそれこそ「バレットジャーナル」の真骨頂だったのだ。

手書きが結局、いちばん効果的。真の効率性を生み出す究極のノート術

 ちなみに「自分は字が下手だから……」と手書きを敬遠している人は、キャロル氏も本の中で提案しているように「筆記用具」を変えてみよう。

 先日も私の友人が「太字の万年筆で書くと自分の字が少し上手に見える」と言っていたが、まさにそれだ。少しペンを変えてみるだけで、書いた字に大きな変化が現れるので、試してみてほしい。