まさに退職給付制度は、目先の利益にとらわれがちな人にとって、将来、愚かな猿にならないようにするための制度なのだ。

退職金前払い制度を
導入する企業が出ている理由

 ところが、企業にとってこの制度はかなり負担が大きい。それはそうだろう。本来なら毎月の給料に上乗せして支払うべき分を取っておき、運用していかなければならないからだ。

 昔のように、高度成長期で金利が高い時代であれば、いかようにも運用できる方法はあったし、社員に支払うべき報酬を預かって運用することによって超過収益が出ていた時代もあった。

 ところが、現在のような低金利において、年率2%とか2.5%といった運用益を確保するのは、なかなか骨の折れること。したがって、前述のように「退職金前払い制」の会社も出てきているのだ。

 ただ、先ほど説明したようなデメリットがある。そこでそのデメリットを解消し、かつ会社が債務負担を負わなくてもいいようにした仕組みが、「確定拠出年金(企業型)」なのだ。

 この場合、会社は従業員の口座に掛け金を拠出するので、これはある種の退職金前払いだ。ところが従業員の側から見れば、これは給料ではないから税金はかからない。さらに、使ってしまうかもしれないというリスクも、「60歳までは引き出せない」という制約があるため、確実に確保しておくことができるわけだ。

 もちろん、確定拠出年金の場合は、自分で管理して運用リスクを負うことになるので、必ずしも従来型の企業年金よりいいとは言い切れない。ただ、形式はどうあれ、報酬の一部を退職後でなければ受け取れないという退職給付制度の仕組みは、まさにイチロー選手が契約したDeferred Paymentと本質的に同じなのだ。