全体を知ることでデザインが浮かび上がってくる
水野 それね、すごく面白い話なんですけど、ぼくの仕事の仕方はまさにそれです。
たとえば今、福井県の鯖江市にある、漆淋堂さんという漆の会社とお仕事をしています。みなさん「漆」というと輪島塗じゃないですか。その輪島塗を作っているのは、ほとんどが鯖江の人たちなんですよ。
佐渡島 輪島の人たちじゃないんだ(笑)。
水野 輪島の人たちじゃなくて、鯖江の人たちがかなり作ってるんです。
佐渡島 眼鏡だけじゃないんですね、鯖江は。
水野 鯖江は眼鏡だけじゃないんですよ。鯖江は伝統工芸がめちゃくちゃ集まっていた地域だから眼鏡もあるんです。そして、漆がものすごく盛んで。「越前漆器」というんですけど、漆の器で産地の歴史としては日本最古参なんです。
これ、証拠がないから言えないだけですけど、おそらくいちばん古いんですよ。何年前からあるかというと、1500年前からあるんです。だからもう日本史はだいたい593年ぐらいから始まるじゃないですか。あのぐらいからもうあるんですよ。
佐渡島 大宝律令の頃にはもうあったんですね。
水野 聖徳太子が摂政になるやつですよね。だから「そのぐらいからある」と、まずそこから調べちゃうんですよ。「なんでそんな資料残ってるの」「ここにこういうふうに書かれてるんですよ」といった具合で。
そして、ずっと調べていくと「あ、じゃあ、デザインはこうだね」と、やっぱり必然的に決まっていくんですよ。
佐渡島 そうですね。そういう意味でいうと、東大の数学も結局はそういうふうに考えられている。
というか、数学ってものごとをすごく「シンプル化」しているものじゃないですか。例えば、ある状態を「n」とすると、次の状態が「n+1」ですよね。
水野 うん、まあ、そうですね。
佐渡島 「n+2」があって、で、「n」と「n+1」と「n+2」の関係値を調べると、例えば「n+10」とかが自然と想像できるじゃないですか。
水野 う、うん。
会場 (やや不安を覚えつつも)(笑)。
佐渡島 これを「漸化式(ぜんかしき)」というんですけど、この漸化式を理解すると「予測力」がつくんですよ。
東大の問題って、基本的に漸化式を学ばせるんです。
ものごとの変化を理解するためには、たとえば地図の場合も、絶対に1点だけでは場所がわからなくて、まずは2点必要だし、3点あるとより正確にわかるじゃないですか。
水野 おお~。
佐渡島 というのと、数学も同じようになってるんですよ。
水野 それもぼく、仕事でやってますよ。ヒントがいっぱいあればあるだけいいんですよね。
佐渡島 そう、そう。そのピン打ちできるヒントがあれば。
水野 そう。デザインって、「デザインされる部分」を作ってると思いがちなんだけど、そうじゃなくて、「まわり」を作ってるんですよ。
まわりをぜ~んぶ作っていくと型と一緒で「中」ができるじゃないですか。大仏みたいにまわりを作っていって、中に流し込んでパカッて開くとできている、ということなんです。
※対談の続きは4/17公開予定です。
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◎もくじ
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【1章】ぼくらの仮説が世界をつくる―革命を起こすための思考アプローチ
【2章】「宇宙人視点」で考える―本質を見極め常識を打ち破るための思考法
【3章】インターネット時代の編集力―モノが売れない時代にぼくが考えてきたこと
【4章】「ドミノの1枚目」を倒す―遠くのゴールに辿り着くための基本の大切さ
【5章】不安も嫉妬心もまずは疑う―「先の見えない時代」の感情コントロール
【6章】仕事を遊ぶトムソーヤになる―人生を最高に楽しむための考え方
おわりに―仮説を実現する冒険に出よう
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クリエイティブディレクター
水野学が、段取りの秘密を全公開!
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動かすにはどうすればいいのか?
多くのプロジェクトを手がける
クリエイティブディレクターが
その「段取り」の秘密を全公開します。
◎仕事を効率的に進める上で
避けては通れない「段取り」。
とても大切な技術なのに
学校でも会社でもきちんと教えてはくれない。
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付き合うのは常に他業界であり、
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決定権やスケジュール感も
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いかに水野氏は「段取り」をしているのか。
その秘密を明かす。
著者からのメッセージ
多くの仕事を日々進め、
ありとあらゆる関係者と
コミュニケーションをとりますが、
ぼく自身にストレスはありません。
仕事はスムーズにどんどん進んでいきますし、
チームも円滑に動いています。
それはなぜか?
ストレスなく仕事が順調に進むのは、
きちんと「段取り」をしているからです。
「段取り」という言葉は
少し古くさいかもしれません。
それでも、仕事においてとても大切なことです。
仕事の目的を定め、きちんと計画し、
あらゆる突発的なことも先回りしながら、
時間どおりに実現させる。
段取りとは、仕事の「超基本」なのです。
おもな目次
クリエイティブディレクターが「段取りの本」を書く理由
CHAPTER 1 段取りは「目的地」を決めるところから
◎1 プロジェクトのゴールをイメージする
◎2 ゴールを「ビジュアル」で共有しよう
◎3 想像の範囲を100年後まで広げよう
◎4「ターゲット」の解像度を極限まで上げよう
CHAPTER 2 最高の段取りをするために
「目的地までの地図」を描こう
◎1 すべての仕事は「ルーティン」である
◎2「ルーティン」が余裕を生み、仕事の質も上がる
◎3 コンセプトはプロジェクトの「警察」である
◎4 まず「知ること」からすべては始まる
CHAPTER 3 目的地まで最短距離で進もう――時間と効率化の話
◎1 すべてにおいて時間は「王さま」
◎2「締め切りが完成」である
◎3 仕事が入る「時間ボックス」を用意する
◎4「つらい仕事か、楽しい仕事か」は考えない
◎5 スケジュールが破綻しないために
CHAPTER 4 脳内に「空白をつくる」ために段取りをしよう
◎1 段取りが大切であるほんとうの理由
◎2 なるべく「ボール」を持たないようにする
◎3 生産性をマックスにするための打ち合わせ
CHAPTER 5 目的地までチームで動こう
◎1「チーム」を超えて「仲間関係」をつくろう
◎2 チーム全体で同じ方向を向くために
◎3 本音のコミュニケーションがチームを円滑にする
◎4 段取りをスムーズにするリーダーのひと工夫
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著者プロフィール
水野学(みずの・まなぶ)
good design company代表。
クリエイティブディレクター、
クリエイティブコンサルタント。
ゼロからのブランドづくりをはじめ、
ロゴ制作、商品企画、パッケージデザイン、
インテリアデザイン、コンサルティング
までをトータルに手がける。
おもな仕事に、相鉄グループ「デザインブランドアッププロジェクト」、熊本県「くまモン」、中川政七商店、久原本家「茅乃舎」、イオンリテール「HOME COORDY」、東京ミッドタウン、オイシックス・ラ・大地「Oisix」、興和「TENERITA」「FLANDERS LINEN」、黒木本店、NTTドコモ「iD」、農林水産省CI、宇多田ヒカル「SINGLE COLLECTION VOL.2」、首都高速道路「東京スマートドライバー」など。ブランド「THE」の企画運営も手がける。
The One Show金賞、D&AD銀賞、CLIO銀賞、London International Awards金賞ほか受賞多数。
著書に『「売る」から、「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講義』(誠文堂新光社)、
『センスは知識からはじまる』『アウトプットのスイッチ』『アイデアの接着剤』(すべて朝日新聞出版)などがある。