平成時代が終わり、令和時代が幕を開ける。同時に働き方改革関連法が施行され、日本人の働き方も新しい時代を迎えそうだ。とはいえ、景気が回復したとは言い難く、明るい話題ばかりではない。「何をしたいのかわからない」と悩む就活生も、「このまま今の会社にいていいのか」と悩む社会人も少なくないだろう。
 そんな悩みを解決する本が、ダイヤモンド社より刊行された。『苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」』である。倒産確実と言われていたUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)を、わずか数年で世界第四位のテーマパークにまで導いた稀代のマーケター・森岡毅氏の著書である。
 森岡氏は、自分自身のキャリア構築にマーケティングの手法を取り入れることで成功してきたという。そのノウハウを巣立ちゆく我が子のために書きためていた。そんな「森岡家の虎の巻」が惜しげもなく公開される。
 子の成功を願う親の想いで綴られた、マーケティングの手法で論理的にキャリアの構築法を説いた前半、そして逆境に追い込まれ、ヒリヒリする痛みの中でどのように失敗や不安と向き合ってきたかを語る後半。右脳と左脳を激しく揺さぶられるような、ダイヤモンド社が自信をもってお届けする10年に1冊の傑作ビジネス書である。
 本連載では、森岡氏の実戦に基づく独自のキャリア構築法をうかがっていく。どうやって自分に合った仕事を見つけるのか、どうやって能力を伸ばしていくのか、悩める就活生や社会人はぜひ参考にしていただきたい。
 第4回のインタビューでは、これからの時代の状況認識について聞いていきたい。AIの普及などで変わっていく時代に生き残れるビジネスパーソンとは?

AIにできない仕事が
できる人は重宝される

――これからの時代は大きく変わると言われています。AI化だったり、少子化だったり、キーワードはいくつかありますけど、ビジネスパーソンはそれらをどういうふうにとらえて、どういう行動をとったらいいのでしょうか?

森岡 AIが流行ると多くの人が失職するとか、多くの職能がAIに取って代わられるという人がいますけど、それはあまりにも世の中をざっくりと掴みすぎていると思います。実は、AIに奪われる職能とそうでない職能があるんですよ。AIに奪われない職能は、より価値が増すんですね。そこでの競争というのはより激しくなっていくので、私はAI時代はますますスキルが要求される時代になると予想しています。

 より高度な人間にしかできない仕事、クリエイティブな思考力、発想力を使う仕事、対人インターフェースになるような仕事、こういう領域は人間に残ると思います。高度な社会的な判断が人間に残る。いわゆる、ホワイトカラーと言われている人の仕事のなかのより高難度な仕事ですね。マーケティングに関しても、AIに取って代わられる部分とAIではできない部分に分かれていくでしょう。ファイナンスの領域に関しても、AIに取って代わられる部分と取って代わられない部分があります。これは全ての職能に対して起こる。つまり中途半端なスキルを持っている人がAIに取って代わられるということですね。

 料理で言うと、下ごしらえの仕事のような部分です。単純な分析というのはAIでもできてしまう。でも高度な分析はAIにはできない。私は実際、AIを使ってマーケティングの研究をやっていますから、すごくそこはわかるんです。AIは仮説を作れないし、過去の集積のベクトル上にあるものしか提案できない。全く新しい隔世的なものをポンと生み出すのは苦手なんです。AIにできない領域は実はたくさんある。特にマーケティングの高度な領域は、なかなかAIに取って代わってもらえないですね。
かつて工場労働者の中の単純工程の部分を作業ロボットが取って代わったようなことが、ホワイトカラーの領域にも起こると思えばいい。どこかのデータを抽出してまとめて提示するみたいなレポート業はAIの方が速いし、文句を言わずやってくれる。そういう仕事はどんどんAIに奪われるでしょう。だからそのレベルのスキルしか持っていない人は職を奪われるリスクが高いと思っています。

 その上にある、情報を汲み上げて、それを戦略化して、会社のパフォーマンスをさらに持ち上げるような戦略を生み出す仕事は、もうこれは人間にしかできない。それはちゃんとトレーニングを積み、経験とノウハウを持った人間にしかできない。そういう高度なスキルを身につけた人たちとそれを身につけられなかった人によって、世の中はますます二極化する方向に動いていくと思います。業界によって、職種によって、浸食してくるスピードは大きく変わるでしょうが、クリエイティブな発想などを必要としない仕事はちょっと危ないですね。経理財務をやるにしても、営業をやるにしても、マーケティングをやるにしても、法務をやるにしても、これからの人間はAIができないところまでスキルを積んでおくことを心がけて働かないと、働く醍醐味というものがなかなか味わえない立場になっていくような気がします。

参考記事

面接とは、自分を印象付けるゲームである
森岡毅インタビュー[3]