長尺化の原因は
動画広告の「ストーリー性」

 そんな長尺動画広告の主戦場はYouTubeだ。

 少し古いデータになるが、2016年にマクロミルとデジタルインファクトが広告関係者に行った調査によると、最も利用したことが多い媒体はYouTubeで68.8%だった。このことからも動画広告においてYouTubeがいかに大きなウエートを占めているかが分かる。

 動画広告が長尺化している要因は、近年のウェブ動画広告の作り方にあると押切氏は語る。

「近年の動画広告はストーリー仕立てになっていることが多いです。冒頭のインパクトで視聴者の心をつかみ、ストーリーの展開でスキップさせない努力をしています。まるで映画の予告編のように目まぐるしい展開で一気に見せていくパターンや、初めは何の広告なのか分からないようになっていて、最後のオチの部分で商品名や企業名が分かり、視聴者も納得するというパターンもあります」

 動画広告冒頭でインパクトを与え、そのまま長時間見てもらう手法は「キャッチ&ホールド」と呼ばれる。前出の東亞合成の動画は、アニメ調で突飛な設定を冒頭から打ち出し、最後まで見せることに成功した例だろう。

 さらに、ウェブ広告ではターゲットに合った広告が自動で流れるため、ユーザーの興味関心が高い動画広告が流れやすい。テレビとは違いピンポイントのターゲットに見てもらうには、動画広告も相応に作り込む必要がある。

「今や視聴者は、優れた動画広告をコンテンツとして見ています。それはYouTubeに顕著です。プロではない一般人が作ったYouTubeチャンネルの本編の動画よりも、動画広告は予算が投入されて、ストーリー性があるため視聴に堪えるクオリティーのものが増えています。また、視聴者自身もYouTubeを見るのは、帰宅後の夜など時間のある時に見る傾向があるため、長尺の動画広告でも受け入れられる素地があります」

 ストーリー性やコンテンツとしてのアート性が強まることで、すぐに購入を促す「売り売り」な広告も減る。この点も長尺化の要因であり、視聴者が最後まで見てしまう要因でもあるのだ。