なぜ著者は、文章術をこれほどシステマチックに伝授することができるのか。その背景には、著者が大学院でシステムズエンジニアリングを学んでいたことがあるという。その経験をもとに、出版社勤務時代に身につけた「編集」のスキルを「システム」ととらえ、学術的にアプローチしたそうだ。OJTで身につけた仕事を言葉で表すだけでも骨が折れるだろうに、ここまでわかりやすくまとめるのには多くの苦労があったのだろうと推測する。

 本書のチェックシートを活用すれば文章スキルが上がるという学術的な検証結果も出ている。他の文章術の本が合わなかった方に、是非読んでもらいたい一冊だ。(泉 未来)

本書の要点

(1)編集者の価値は「常に読者の視点で考えること」と「伝わる内容にすること」にある。
(2)文章力向上のためには、編集執筆力を身につけることが重要だ。編集執筆力は「文章基礎力」「文章表現力」「文章構成力」「メディアマインド」の4つから成る。
(3)「メディアマインド」とは、情報発信をするメディア人がもつべき心のあり方を指す。
(4)読者を「楽しませる」「共感させる」文章を書く場合には、論理だけではなく、感性も交えた「ゆるやかなロジック」を使う。

要約本文

◆編集者の2つの価値
◇価値(1)常に読者のことを考えている

 文章力を向上させるためには、「編集者の視点をもって執筆する力」(=「編集執筆力」)が必要だ。編集者の価値は2つ。「常に読者の視点で考えること」と「伝わる内容にすること」だ。この2つを備えていれば、単なる「文章力」ではなく「編集執筆力」があるといえるだろう。

 まず、「常に読者の視点で考えること」。この価値を理解するには、ライター業務と編集業務の違いを理解している必要がある。

 本づくりには、企画、取材、執筆、編集、校了、販売という6つのフェーズがある。ライターの業務範囲は、取材と執筆だ。一方、編集者は、6つのフェーズをすべて担当する。常に販売フェーズのことを念頭において内容を作り込み、文章に編み込んでいく。