営業において、説得力・交渉力は不可欠なもの。これまでは自己流で身体で学ぶというのが主な方法でしたが、説得のメカニズムを「科学」しておけば、誰でも効果的に説得力を身につけられるのです。
では、社会心理学の視点から「説得力を向上させる6つの方法」を紹介していきましょう。
まず、説得の一般的なプロセスとしては以下の6つのプロセスが考えられます。
●プロセス1 外部環境を整備する
●プロセス2 自分を演出する
●プロセス3 相手を知る
●プロセス4 説得力を行使する
●プロセス5 説得を強化する
●プロセス6 説得の効果を分析する
まずは事例を用いて説明した後、各プロセスの詳細、説得のテクニックについて解説していきます。
今回は「プロセス1:外部環境を整備する」について解説しましょう。
外部環境の整備に失敗した
建築家Aさんのケース
「なぜ自分のデザインが気に入られないのだろう」
Aさんの建築家としての実力は、自他ともに認めるものがあります。事実、以前勤めていた建築事務所では、Aさんが独立するに当たって、ボスをはじめ周囲から強く引き止められました。
独立してからも、Aさんの仕事を知っているかつてのクライアントからの紹介で、何人もの人が事務所を訪れてきました。しかしどういうわけか、最終的な依頼に結びつきません。趣味や嗜好が大きく影響するこの手の商売の場合、相性の問題もあり、クライアントの種類も変わったので、一度や二度仕事がまとまらなくてもさしてAさんは気にとめませんでした。
しかし、5人連続で断られるとさすがにAさんも少し不安になってきました。なぜ依頼されないのか、その理由が分からない。もしかすると独立してやっていけるほど、自分にはセンスも才覚もないのかもしれない。でも、自分はこれまでも数々のコンペに勝ち、クライアントからの評価も高く、業界では一目置かれている存在だと自負するところがある。考えれば考えるほど、Aさんは疑心暗鬼に陥ってしまいました。
説得は話す前から
すでに始まっている!
Aさんは、何が悪かったのか、冷静に振り返ってみることにしました。まずこれまでのケースに共通する要素をリストアップしてみました。
・訪問者はすべて独身女性
・全員が1人で事務所を訪れ、そこで商談した
・こちらは自分とアシスタントの男性、事務の女性の3人
・時間は夏の土曜日の夕方