国会議員秘書制度について

 議員秘書には、公設秘書と私設秘書がいます。公設秘書は、国費によって国会議員に付される秘書のことで、給与は国から支払われ、身分は国家公務員特別職となります。1人の議員に、政策担当秘書、第一秘書、第二秘書と3人の公設秘書が付きます。第一・第二秘書は資格は必要ありませんが、政策担当秘書は、(1)「国会議員政策担当秘書資格試験」に合格する、(2)10年以上公設秘書を務めて研修を受ける、(3)司法試験や国会公務員総合職などに合格して認定される、の3つのうちどれかのルートを経る必要があります。

 政策担当秘書は、国会法で「主として議員の政策立案及び立法活動を補佐する秘書」とされ、その使命が規定されています。官僚主導ではなく議員主導の政治を実現するため、政策担当秘書には、政策立案を遂行できる専門的な知識と能力が必要とされていますので、霞が関のキャリア官僚になるための国家公務員総合職試験と同レベルの「資格試験」があるわけです。

 しかし、実際に政策担当秘書に就いているのは、(1)の資格試験に合格した「試験組」が1割、(2)の10年以上の秘書経験を経た人が9割という比率で、(3)は非常に少ないです。(2)の10年の経験を経た政策担当秘書は、政策の専門家ではなく、選挙や資金集めのプロです。つまり、9割の国会議員は、国民のために政策を立案することよりも、自分の当選のために選挙活動や資金集めをすることを重視していることになります。

「試験組」の政策担当秘書は少数派で、永田町ではある意味異質な存在です。若くして「資格試験」に合格し、形式的に秘書の中でトップとなる政策担当秘書に就く場合は、事務所の他の秘書からの嫉妬やいじめを受けることもよくあります。

ケース1:上田さん(仮名)40代後半男性の政策担当秘書

 上田さんは証券会社に15年間勤めた後、前述(1)の「資格試験」に合格し、政策担当秘書として採用され10年がたちました。会社員時代は経済分析をしてレポートを発表するなど、エコノミストとして活躍していました。しかし、分析して経済政策的なものを提言しても、それが実現することもなく、「空中に向かって大砲を撃っている」ような気がしていたそうです。

 それで、自分の考えたことが現実の政策に生かされるような仕事がしたいと考え、政策担当秘書の試験を受験し、見事1回で合格したということです。試験に合格すると、採用を希望する人は合格者名簿に経歴が載り、それを見た議員が採用を打診してきます。上田さんも合格して半年ほどたった頃、政策立案能力のある人を探していた衆議院議員からアプローチがあり、証券会社を辞めて政策担当秘書に転身しました。

 政策担当秘書に就任してからの上田さんは、エコノミストとして理論と現実の両面から経済を分析してきた経験が大いに生かされました。経済産業委員会などの質問原稿を作成し、議員がその通りに質問し、大臣が踏み込んだ答弁をして、実際に政策が動いている手ごたえを感じたそうです。