案の定、というべきか。ゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラーが2月17日に米政府に提出していた経営再建計画に対し、オバマ政権は「実現不可能」とし、全面的な見直しを命じた。
周知のとおり、当面のつなぎ融資は提供するものの、GMは60日、クライスラーは30日と、与えられた猶予期間内に抜本的なリストラ策を示さなければ、連邦破産法第11条(チャプターイレブン)を適用するという手厳しい内容だ。
特に、クライスラーに対しては「単独では存続できない」とまで言い切り、「フィアットとの提携が実現しなければ、追加融資を打ち切る」と明言している。
オバマ政権が“実現不可能”とした理由は何か。たとえば、GMの再建計画の場合、楽観的な市場シェアや価格(の支配力)、車種構成、競合日系メーカーに劣る環境技術など、あらゆる前提条件での“甘さ”が指摘されている。
端的な事例をいえば、2008年の北米のシェアは21.5%だが、14年でも19.1%を維持。つまり、6年間で2.4ポイント、毎年0.4ポイント程度しか落ちないという前提だ。ところが、06年の北米シェアは23.8%。08年までのわずか2年間で2.3ポイント減少。再建策でブランド数や車種数の絞り込み、レンタカー業者などへの法人向け販売削減を打ち出すなか、「予想シェアがおかしいのは小学生でもわかる」(業界関係者)。
加えて、14年時点でのネットキャッシュフローがマイナスとしている点も問題とされ、ブランドやディーラー数の絞り込みが不十分としている。
「労働組合を支持基盤とする民主党のオバマ政権には、GMはつぶせない」。医療保険基金への拠出金や無担保債務の株式化をめぐり、いまだに労働組合や債権者から譲歩が引き出せていない点には、GMにも相手側にもそんな甘えがあったのだろう。
だが、税金での民間企業救済に対し、世論の厳しさが増すなかで、外堀はだんだんと埋められつつある。3月19日には部品メーカーを対象にした政府支援策が、30日には政府による消費者向けの米国車の保証プログラムなどが決定。「万が一に備えてのセーフティネットが構築され始めている」(寺澤聡子・みずほ証券シニアクレジットアナリスト)。
まさに、今度こそ、甘えが許されない“最後通告”といえよう。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 山本猛嗣)