人生という図書館に「自分だけの蔵書」を加えていく
――「人生の記録」は将来参照できる選択と行動の資料だ

 ほかにも、すごくいいことがある。毎日を新鮮な気持ちで始めることができるのだ。デジタル・トラッカーでは、トラッカーを立ちあげたときから終わりのないトラッカーが延々と続く。

 一方バレットジャーナルでは、毎朝、まだなにも記入されていない真っ白なページで1日を始めることができる。それはまた「あなたの1日はまだなにも記入されていない、無垢な状態にある」という、ささやかなリマインダーの役割も果たす。

 するとしだいに、そうした考え方が身についてくる。バレットジャーナル・ユーザーのケヴィン・Dはこう述べている。

「以前は1日の終わりにすませていない用事が残っていると、気分が悪かった。でも、バレットジャーナルを始めてからは、前日終えられなかったタスクを新たなページに動かせるから、元気がでるようになった。日々、新たなスタートを切ることが、目で見て実感できるようになったんだ」

 それに、あなたのノートは、あなたとともに進化する。「ともに反復している」と表現してもいいかもしれない。変化を続けるあなたの必要性に順応するのだ。

 その結果、自分がどんな選択をし、決断をくだし、その後どんな体験をしたかという記録を、数年後に見直せる。

 バレットジャーナル・ユーザーのキム・アルバレスは「バレットジャーナルの1冊1冊が、人生という図書館に蔵書を加えていくの」と述べている。生きる意味を追求するうえで、この図書館は好きなときに自由に使える豊かな資料を提供してくれる。

 人生の記録をつけることで、僕たちは将来、参照できる資料をつくっているのだ。自分の選択と行動が記された資料の宝庫を。そこには自分が犯したミスも記されているから、過ちから学ぶこともできる。

 それに成功したことも、突破口を見つけたことも書いてあるから、指標にもなる。仕事で、あるいは私生活でうまくいったことを記録しておけば、当時の状況や、どんな選択が功を奏したのかをあとで参考にできる。

 失敗を検証し、成功を振り返れば、どの道を進んでいこうかと思案する過程で、貴重な内省、導き、刺激を得られるのだ。

 バレットジャーナル・メソッドとアプリは共存できないのだろうか? 無論、そんなことはない。ノートではできない方法で、日々の生活をスムーズに送れるようにするアプリはたくさんある。

 ツールというものは、たとえそれがデジタルであれアナログであれ、目の前のタスクを完了する役に立つ機能があるときにだけ、価値がある。

 本書(『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』)の目的は、あなたの作業場に新たな道具を導入することだ──人生という扱いにくいプロジェクトに取り組むうえで、これまで大勢の人たちの役に立ち、有効であることが証明されているツールを。