「給与計算に1万1888時間かかる」驚愕データ

 驚くべきデータがある。サッポロHDが給与計算の業務にどのくらいの時間を費やしていたのか、を社内調査で浮き彫りにしたものだ。人事業務のフローとともに説明しよう。

(1)勤怠入力。この作業のみ社員が行う。
(2)勤怠管理(入力内容のチェック) 2243時間/年
(3)給与支給・控除データの入力、加工(通勤手当や家族手当などの追加) 947時間/年
(4)給与計算・給与確定 8350時間/年
(5)月末業務(給与確定後の作業) 348時間/年

 給与計算に費やしていた時間は、年間あたり合計1万1888時間に上っていた!日本人(フルタイム)の平均的な総労働時間を約1700時間とすると、給与計算を行う業務だけで「7人分の仕事」を生み出してしまっていた計算になる。

 そこで、給与計算の自動化のために、ベテラン社員からのヒアリングをもとに標準化を行った。

 たとえば、勤怠入力の次の作業である「勤怠管理」は、社員の書き間違いを正す作業である。よくあるのは数値を入れなくてはいけないところにスペースを入れていた、というようなものだ。つまり、そもそも勤怠を入力する時点で本人がきちんと書けば済む話であるため、書き間違いはエラーが出るように標準化した。

 その他の作業も、ルールを統一して標準化することで、月末業務以外は全て自動化できることが判明した。

 2019年2月より、試験的にグループ会社1社でRPAをトライアルで導入。3月には13社すべてで導入したところ、劇的な効果をもたらした。

 結果として、給与業務を行わねばならないのは月末のみに限定され、給与業務に費やす時間は、年間1434時間まで押し下げることができた。実に、マイナス88%の大幅な圧縮である。

 確かに、グループ間の人事業務の集約化は一筋縄でいくものではない。面倒くささが先に立ってしまうケースも少なくないだろう。それでも、自動化することで社員や人事部員の負担を減らし、人材の余力をこれだけ生み出すことができるというわけだ。

 念のために付け加えておくと、RPAを導入したから改革がうまくいったというわけではない。

 「RPAを導入するというと、現場はまるで魔法がかかったかのようになんでも解決してくれるというのは大間違いです。注意しなければならないのは、『野良ロボット』の繁殖なんです」(高橋さん)。

 野良ロボットとは、管理者不在のRPAロボットのことを言う。例えば人事部責任者など、「ある人」が推進して導入した業務改善のためのメニューやサービスも、その推進者が異動してしまった場合には、後任者は自分が理解できるもの以外は活用しなかったりする。現場に、ロボットに詳しい人がいなくなった瞬間に、ロボットが“野良化”してしまうのだ。

 グループの拠点ごとにバラバラにロボットが導入されてしまった場合も、導入された経緯、目的といった情報が共有されておらず、野良ロボットが繁殖しがち。こうなると、ロボットを導入したことが、かえって業務効率化を邪魔することにもなりかねない。

 ロボットは決して「魔法の杖」ではなくて、業務効率化のためのツールに過ぎない。ロボットを導入することで業務フローを見える化し、社員で情報を共有し、一丸となって業務改善に突き進むことに目的があるのであって、ロボット導入が目的化してしまっては意味がないのだ。