「団地を1つの大きな家族に」
高齢者・スタッフ・子どもが共生する小多機

ぐるんとびー駒寄
「ぐるんとびー」の玄関先。子どもたちが出たり入ったり

 3LDKの部屋が「通い」の高齢者のデイルーム。テーブル前の椅子にすわった高齢者に、ボール遊びに夢中な小学生の子どもたちが話しかけてくる。キッチンでは高齢女性がスタッフと一緒に調理中だ。その姿をソファに深々と腰を下ろした高齢男性がにこやかな表情で眺めている。子どもたちは玄関から出ていったかと思うとまた、すぐに戻ってきて遊びだす。

 少し前まで日本の各地にあった大家族の光景そのものだ。小学3年生の不登校児が友達を連れてきて過ごす。その兄の小学6年生も一時不登校だった時に、居場所にしていた。

 こうした様子を報告書では、「多世代の交流が生まれていることはもちろん、子どもがこうした場に早くから触れることで、住民のケアしあう関係性を自然に学びとっている」と褒めたたえる。

 子どもと高齢者がケア事業所で「共生」しているだけではない。小多機の利用者29人のうち9人が同じ団地内の住民である。うち8人は24時間ケアにひかれて引っ越してきた。

ぐるんとびー駒寄
子どもも一緒に調理に加わる

「お昼御飯ですよ」とスタッフが昼食を持ってきたのは、小多機の事業所から2軒先の玄関先だ。住人のAさん夫妻は、共に小多機の利用者。妻は午前中の気が向いたときに、小多機の部屋に現れる。昼前に一時帰宅してもいい。

 別の高齢女性のBさんの住まいも同じ棟にある。女性スタッフが同居人として昨年9月から住みついている。家賃は分割して払う。「朝から小多機のデイルームに行かれ、ほぼ1日中いますので、事実上この部屋は寝るだけ」とスタッフがBさんの生活を説明する。ほかにも団地内に引っ越してきたスタッフは7人もいる。

 つまり、利用者とスタッフがケアの拠点、小多機を取り囲むようにして暮らしているのである。「団地という地域を1つの大きな家族にしていきたい」と理学療法士で社長の菅原健介さん。社員に先駆けて、最初に家族5人で団地に越してきた。

 団地住民との交流も深まりつつある。団地自治会の役員8人のうち、半数がぐるんとびーの経営者と社員で占めたこともある。住民の交流会を提案し、実現させた。地域共生社会の到達先は、「受け手」と「支え手」が固定化されることなく、全ての人々がつながる新たな「まちづくり」といわれる。その第一歩を踏み出しているようだ。

 名前の由来となったグルントビーはデンマークの作家で教育者。対等な対話による全人教育を唱えた。菅原さんがデンマークで中高校時代を過ごした時に、今でもその精神が引き継がれていることを知ったという。「地域の人たちと『ぐるーんと』一緒に関わっていく、という意味も込めています」と話す。