年収500万円の社員は
いくら稼がなければならないか
会社は毎年度継続的に利益を生み出さない限り、中長期で成長していくことができません。3年連続で赤字が続くと債務超過になることもあり、倒産する危険性さえあります。
会社で働く全社員に給与を支払い、原材料・商品を買い、あらゆる経費や税金を支払ったあとで、最終の利益が5%残るためにはどのような損益構造でなければならないか。会社の業種・業態・機微によっても異なりますが、年収の何倍くらい稼げば会社に利益が残るのでしょうか。
年収500万円前後の人が勤めるサービス業、メーカー、小売業で、1人当たり損益計算書を作って大ざっぱに比較してみることにしましょう(図表2参照)。
東京証券取引所に上場している富士ソフト、大正製薬、メガネトップ3社の2011年3月期有価証券報告書を使ってみます。連結ベース(グループ企業全体の数字)では人件費のデータが開示されていないので、個別(上場会社単体)の決算書の数字を抜き出し、1人当たり損益計算書を作ってみました。
この3社の算出結果は、それぞれ業種の特色を表した損益構造となっています。
システムインテグレーターの富士ソフトは、売上高の半分を人件費として支払い、残りを外注費、減価償却費、設備費などに費やしたのち、3%が利益として残っています。ソフト開発会社は「人件費商売」と総称しても過言ではないでしょう。
製薬メーカーの大正製薬は、売上高総利益率(粗利率)が67%と非常に高いものの、販管費に48%費やし、最終的に15%が利益として残っています。販管費のなかで大きい割合を占めるのは広告宣伝費、販売促進費、研究開発費の3つで、合計すると売上高の24%に達します。人件費の割合は12%ほどです。
昔から「薬九層倍」と言われるように、薬の売価は原価よりはるかに高く、粗利は高いですが、研究開発にカネをかけないと新製品が作れないし、宣伝広告しないと売れないということですね。
多店舗展開するメガネ販売業のメガネトップは、大正製薬同様に売上高総利益率(粗利率)が69%と非常に高く、人件費、賃借料、広告宣伝費などの販管費に58%費やしたのちに、最終的に5%が利益として残ります。
粗利の高いメガネも、多店舗展開しないと大量には売れません。多店舗展開するには27%の人件費、11%の賃借料ほか相当な維持費がかかるということです。