――民間保険や自費で治療する米国などで、分割払いは1つの策ですね。公的保険でカバーするときに医療財政が破綻しないようにする策はありますか。

 理解してほしいのは、新しい治療によって、政府や社会は長い時間をかけて結果的にコスト削減できる可能性があるということ。従来の治療では5年、10年、20年と長期にわたって継続して一人の患者を治療し、コストがずっとかかってきます。

――海外では治療効果に応じて支払う「成功報酬型」を採用しているケースがあります。他には?

 いろいろなモデルがあるでしょう。成功報酬型は1つの選択肢だと思います。製薬会社が成功報酬型を提案したところで、対応可能な制度がその国になければ導入できない。臨床的アウトカム(治療の結果、成果)を測定し、アウトカムに対して支払いを行う制度を国で立ち上げる必要がある。全世界共通の仕組みがあるわけでなく、各国がそれぞれのアプローチで制度を作り上げようとしている最中です。

 ただ、成功報酬型が他国で選択肢になっても、日本にとってより適切な方法は別にあるかもしれませんよね。1つの国にいろいろな支払いモデルがあってもいいと私は思います。急性期(症状が急激に出る時期)の治療、慢性期(症状が比較的安定している時期)の治療、1回の治療のみで一生涯治療の効果を享受できる細胞・遺伝子療法など、治療の内容や方法によってモデルを変えてもいいのではと。

 日本に一番適切なものは何か。繰り返しますが、今一番大事なのはステークホルダーみんながそれを話し合う場を作ることです。

――ステークホルダーを集めた議論が必要な一方、製薬会社は治療効果を高める技術革新だけでなく、もっと安く提供するための進化にも励む必要があるのでは?例えば、キムリアが自分の細胞(自家細胞)を使う治療法であるのに対し、大量生産できる他人の細胞(他家細胞)を使った治療法の開発に取り組んだり、生産の効率化を進めたりしていますか。

 薬の質や生産のキャパシティを担保しながら、効率性を高める新しい方法を常に考察しています。もちろん他家細胞のことも頭の中にあり、開発できれば共通化された薬を迅速に提供できるようになるかもしれません。