高齢者の事故で、よく「ブレーキとアクセルを踏み間違えた」ことが原因とされますが、「ブレーキとアクセルを踏み間違える」というのは、認知機能の問題というよりも、運転技術の問題であったり、何かのきっかけで「パニック状態」に陥ってしまったことが原因と考えられます。いったんパニックになったら、若い人でも同じようなことが起こり得ます。

 現在、運転免許の更新時に75歳以上となるドライバーには、認知機能検査が行われています。ただし、この検査は「日常生活での認知機能」を検査するもので、「運転技術」の検査にはなっていません。実際、2018年に交通死亡事故を起こした75歳以上のドライバーの約95%は「検査の結果、認知症ではない人」だったのです(2019年3月警察庁発表による)。つまり、自動車の運転には、認知機能の低下だけに着目するのではなく、「運転技術」そのものをチェックする必要があるのではないでしょうか。

 もう一つの問題は、このところ「自転車の事故」が急激に増えていることです。自動車の運転免許を返上した高齢者がやむを得ず自転車に乗るという傾向もあって、自転車事故が増えているようです。高齢者が自転車で転んで、ひどい骨折でもしたら、その後、それまでのように歩くことが困難になり、最悪の場合、寝たきりとなってしまうリスクが大きいのです。さらに、公共交通機関があまり整っていない地方では、運転免許がないと日々の買い物にも不自由します。免許がないということは、「食」をはじめ、生活の質に直接響いてしまいます。また本人や配偶者が病院に通う手段が奪われるという問題も生じます。

 どうも「都会の論理」で運転免許の返納を促進しようとしているのではないか、と私は勘ぐってしまいます。地方で生活している高齢者の生活事情をよく理解していたら、「高齢者は一律に返納しましょう」という発想は出てこないのではないでしょうか。

「ボケかな」と気づいたときの家族の正しい接し方とは

 家族が認知症になりつつあるな、と気づいたときに、周囲がどう接するかはとても大切な問題です。よく、認知症の人には、頭から否定するような言葉で「逆らってはいけない」とか、「叱りつけてはいけない」といわれます。病気ですから穏やかに接するべきであることは基本ですが、必ずしもそういう「腫物にさわる」ような対応がいいとは限りません。症状と進行の度合いによって、接し方を周囲が考えていく必要があります。