テレビ一強の時代は終わった
媒体にこだわらないのが一流

 だからといって、昔のCMが秀逸で今のCMが劣悪だと決めつけるのは早計だ。なぜなら、CM出稿する企業、広告を作るクリエイター、それを視聴する消費者の価値観も時代とともに変化しているからである。

「昔は企業も『テレビCMで良い“作品”を作れるクリエイターを呼んでください』という風潮がありました。ところが今の企業は『この商材の最も費用対効果の高い“広告”を作ってほしい』という要望が圧倒的に多い。そうした企業からのオーダーに応えられるクリエイターが、今は優秀とされていますし、そういうCMが最も視聴者の購買意欲をそそるのでしょう」

 そうした点から考えると、クリエイターの活躍の場を、もはやテレビに限定する必要はない。2018年のインターネット広告費は1兆7589億円(前年1兆5094億円)と過去最高を記録し、2019年にはテレビ広告費を上回ることが予想されている。

「今の広告クリエイターはウェブが花形です。昔はテレビの高尚なCMは一部の特権階級のクリエイターしか作れませんでしたが、今は多くの人が作れるようになりました」

 それどころか、商材の費用対効果を最大限に出すためには、別にネットにこだわる必要すらもない。

「これは博報堂ケトルの嶋浩一郎社長が言っていたことですが、たとえば花粉症の薬を売りたければ、テレビやネットに広告を出すのではなく、駅前のティッシュ配りが一番です。花粉シーズンにマスクしてる人は花粉症でしょうし、そういう人はティッシュがほしくて自分から受け取りにきますからね。こういうマーケティングを柔軟に考えられる人が、今の一流のクリエイターだと思います」

 そう考えると、昭和のテレビCMよりも、今の広告のあり方のほうが健全なのかもしれない。しかし、かつての“作品”を待ち望んでいる人も多いのではないだろうか。