折しも、昨年から開催地の上海市で介護保険が導入されるなど、中国の介護ビジネスは大きな変革を迎えている。そんな中、2019年のチャイナ・エイドには日本企業も79社(共同出展含む)が出展している。これは5年前に比べると30社増えており、中国市場への参入を本気で考える日本企業が増えている証しでもある。

 チャイナ・エイドの運営会社、上海国展展覧中心有限公司の項目総監の馬智〓(〓の文字は雨かんむりに文)氏は、近年の傾向として「外国企業の出展が目立つ」と語る。

チャイナ・エイドの運営会社、上海国展展覧中心有限公司の項目総監の馬氏
チャイナ・エイドの運営会社、上海国展展覧中心有限公司の項目総監の馬氏 

「今年は日本以外では、アメリカ、ドイツ、イギリス、フランス、イスラエル、スウェーデンなど合計20ヵ国・地域の企業が出展しています。特にドイツをはじめ、欧米勢の勢いがあります。サービス関連の出展は、アメリカ、オーストラリア、オランダが多くなってきています。日本は設計、コンサルなどの出展が増えました」

日本企業の出展は増えている
日本企業の出展は増えている Photo by T.Y. 

 現地企業だけでなく、欧米企業もひしめく中、日本の介護事業者は巨大な中国介護市場を相手にどこまで食い込めるのか、その可能性について、チャイナ・エイドの出展関係者や上海周辺の介護関係者に話を聞いてみた。

ほんの数年で大きく変わった
中国ビジネスへの意識

「中国での介護ビジネスは簡単ではない」――。

 実は、ほんの数年前に比べ、中国に進出する日本の介護事業者の「意識」は激変している。

チャイナ・エイドで、医師によるITを使った遠隔診断の実演が行われていた
チャイナ・エイドで、医師によるITを使った遠隔診断の実演が行われていた Photo by T.Y.

 当初、日本の介護事業者の多くが中国で想定したビジネスは巨大な老人ホームなどを開設して運営することだった。それが現在では「中国で日本企業は老人ホームの開設には、うかつに手を出さないほうがいい」という考えが定着しつつある。

ITを使った高齢者の見守りシステムが進みつつある
ITを使った高齢者の見守りシステムが進みつつある Photo by T.Y.

 その理由は明らかで、思うように入居者や介護スタッフが集まらず、撤退を余儀なくされたり、赤字続きの日系企業の老人ホームが相次いでいるからだ。

 そもそも、これほど多くの日本の介護事業者が中国市場を目指すきっかけとなったのは、政府が推進する「介護の輸出政策」だ。

 日本の介護ビジネスの経営環境が介護人材の不足や社会保障費の制約などで厳しくなっている中、2016年に政府や経済産業省が日本の医療・介護のノウハウや技術を輸出する「アジア健康構想」を打ち出し、2017年以降、成長戦略として「介護ビジネスの国際展開」を推進したことが背景にある。

 これに加え、中国をはじめ、高齢化が進むアジア圏から多くの見学者が日本の介護施設を訪問し、「日式介護(日本の介護)は素晴らしい」ともてはやした。このため、「日式介護」という「日本ブランド」を掲げれば、大きな差別化につながるという考えがあった。

 中国には最大手のニチイ学館をはじめ、野心的な介護事業者が次々と参入した。しかし、その多くは現地法人の整理・統合、契約・提携先の見直しを行うなど、中国事業には苦労している。まず「大成功」という話は聞かない。