心配なのはリスク判断の緩み

 優良企業向け融資は、金利引き下げ競争をしてもフローの金利収入が減るだけ。それさえも長期にわたれば大きな打撃となりかねないが、更に心配なのは信用リスク判断の緩みである。

 優良企業向けに金利を引き下げても融資残高が増えないのであれば、「本来ならば貸すべきでない、信用力に問題のある借り手」に貸すしかない。それで融資判断が甘くなっているとしたら、大問題である。次の不況期に、元本ごと失う可能性がある。

 本来、銀行の融資は信用リスクを厳しく見極めることが前提となっている。消費者金融の「信用力の低い借り手でも、高い金利で貸せば、大数の法則で利益が稼げる」というビジネスモデルとは異なる。

 さらにいえば、長期にわたる景気拡大で、倒産件数が低位安定しているので、これを前提に信用リスクを考えるのは、バックミラーを見ながら運転をするようなもので、危険である。

 好況時と不況時の倒産率を平均してリスク判断をしなければならないが、融資を伸ばそうという意欲が強すぎると、冷静な判断が難しくなる恐れがある。

ゼロ金利も銀行には痛手

 銀行の部門別の利益を考える場合、預金部門は集めた資金を市場金利で経理部に貸し出し、融資部門は必要な資金を市場金利で経理部から借りる、と考えるとわかりやすい。

 そうなると、ゼロ金利時代(厳密には若干のマイナス、以下同様)の預金部門の収入はゼロである。つまり、コスト分だけ赤字である。預金部門が無くても、必要な資金は他行から借りてくればいいのだから、これは当然であろう。

 それならば預金部門は解散すればいいかというと、そうもいかない。個人の預金口座は無くてもいいが、貸出先との資金取引は預金口座を通じて行われるので、預金口座は絶対に必要なのである。

 将来、市場金利が高騰した時に困るという理由もある。一般に、預金金利は市場金利ほど変動幅が大きくないので、預金部門の利益は金利が高騰すると大幅に拡大することが期待されるからである。

 加えて、銀行の決算が悪化した時に、他行からの借り入れが困難になる可能性があるので、相対的に安定している預金を受け入れている方が安心だ、という理由もあろう。

 つまり、ゼロ金利が続く限り、預金部門のコストがそっくり銀行を痛め続けるわけである。ゼロ金利は当分続きそうなので、今後の影響が心配である。

(久留米大学商学部教授 塚崎公義)