「現在、中学生以下の子どもの水難事故からの生還率は88%です。われわれが『浮いて待て』の訓練プログラムを提供し始めた1999年ごろの生還率は、とてもお話になりませんでした」と斎藤会長は振り返る。

「しかし、小学校での『浮いて待て』教室が浸透した結果、万が一、水に落ちてもぷかぷか浮きながら救助を待てる子どもが増え、高い生還率につながったと思います。一方、高校生またはこれに相当する年齢の青少年と高校卒業以上の成人の生還率は、ようやく5割を超えたところです。子どもたちよりもかなり低い。むしろ、水に落ちた子どもを助けようとして、飛び込んだ大人が死亡する例が後を絶ちません」

靴も服も浮力体になる
「浮いて待て」とは?

 水難学会が提唱する「浮いて待て」とは、水に落ちた、あるいは流された時に「あおむけになって背浮きをし、ぷかぷか浮いたまま救助が来るまで待つ」という方法だ。

「人間は肺という自前の“浮き袋”を持っているので、水に落ちてもじたばたせずに息をいったん止めて身体の力を抜くと、誰でも自然に身体の2%が浮きます」

 その2%を鼻と口に割り当てて水面上に出し、素早く息を吸って肺に空気をためてからしばらくがまんし、苦しくなったら素早く吐いて吸い、をくり返していれば救助が到着するまでがんばることができる。逆に大声で助けを呼んで浮き袋(肺)の空気を吐き出したり、腕を水面から上げて貴重な2%を費やしたりしてしまうと鼻と口が水面下に沈み、溺れる可能性が高くなるのだ。

 しかし、水難事故は「水泳中」に起こるとは限らない。むしろ川遊びや磯遊び、釣りなど着衣の時に起こるケースが多い。服や靴を身につけたまま水に落ちてしまったら、水を吸った服の重さで沈んでしまわないのだろうか。

「まず、服を着ていたら溺れる、という思い込みを捨ててください」と斎藤会長は言う。