「ガソリン放火」は強固な殺意、一般的な消火設備・用具は役に立たない

 京アニは1981年創業で、主にテレビや映画の作品を手掛けている。東京一極集中の業界で、地方から作品を発信するユニークな存在としても知られる。2006年に「涼宮ハルヒの憂鬱」、07年に「らき☆すた」、09年に「けいおん!」が立て続けに大ヒット。

 若者のリアルな日常を描き、実写のような背景など高い技術はアニメファンに「京アニクオリティー」と評価される。実在する場所を舞台にした作品も多く、ファンがそうした場所を訪ね歩く「聖地巡礼」はブームとなった。

 それだけに、アニメファンからSNSに「1人でも多くの人が助かりますように」などの祈りや、犠牲者を追悼する投稿が相次いだ。海外メディアも「世界のファンに衝撃」と速報した。

 こうした世界に愛されたアニメ制作現場だが、ガソリンを使った放火は威力が大きく、強固な殺意があった可能性が高いとみられる。

 というのは、気化したガソリンに引火すれば炎は爆発的に燃え上がり、手が付けられない状態になる。一般的に普及している消火設備・用具は、そもそもガソリンに引火した火災を想定しておらず、まず対処できない。

 京アニのスタジオはスプリンクラーの設置義務の対象外で設置されていなかったが、消防関係者によると、スプリンクラーや消火栓、消火器などはガソリン火災に対しては何の役にも立たないという。

 70年代の学生運動などでは、ガソリンをガラス製の瓶に詰め、布などで栓をして火を付け、相手めがけて投げ付ける「火炎瓶」が使われた。シンプルで身近な物で作ることが可能だが、威力からすれば、これは立派な「簡易兵器」といえる。