また、【図2】は「イメージよりも悪かった/低かった」項目の回答率を示したものですが、これを見ると、「給料・報酬」「昇進・昇格のスピード」と、報酬周りの項目が高くなっています。また、「達成感」や「裁量の程度」、「働きやすさ」もイメージとのギャップが大きくなっています。

イメージと異なっていたこと【図2】 拡大画像表示

 簡単に言い換えれば、「この程度しかもらえないのか」「この程度の仕事しかさせてもらえないのか」「こんなに忙しいのか」ということです。

 学生にとって売り手市場である現在、意欲ある学生の成長志向に応えるために、各社が「うちの会社では、若いときから活躍できる」ということをアピールします。若手社員をロールモデルに据え、活躍しているキラキラした社員と触れ合う機会を作り、リクルーターが個別に口説き落とします。

 しかし、肝心の「入社後」に大きくギャップを与えてしまっては、それらは逆効果としか言いようがありません。社会人であれば、こうした行為がアピールでしかないことにすぐ気が付きそうなものですが、社会人と接触する機会が少ない学生は、過度な期待を抱いてしまいます。

就活で「リアリティ・ショック」を
いかに防ぐか

 リアリティ・ショックの核心は、イメージとの「ギャップ」に源泉があることです。単なる入社後の「実態の悪さ」ではなく、「事前の期待値との相互作用」によって発生します。つまり、入社後の実態がどんなに素晴らしくても、学生の期待値がそれ以上に大きかったとすれば、リアリティ・ショックは発生してしまいます。逆に言えば、「事前のイメージ・期待の正確さ」を担保することによって防ぐことができます。

 つまり、リアリティ・ショックを防ぐためのカギは、「入社前に、企業や組織・自分の適性をどこまで理解できるか」ということ。人間関係、組織の状況、求められる能力など、「入社前にその会社のことをいかに正確に知りえていたか」が分かれ道です。

「内定を獲得すること」「希望の会社に入社すること」が就活の目的になってしまうと、この点がおざなりになり、面接テクニックやエントリー・シートの書き方など、表層的な就活テクニックに走りがちです。ゆがんだイメージで志望した企業に、多くの時間をかけて対策を練り、上がりきった期待値が、入社後にことごとく裏切られる…企業も学生も、こうした就活・採用を毎年繰り返してしまうのです。