リアリティ・ショックを招く就活
3つのパターン
では、多くの企業でリアリティ・ショックを生み続けている、「陥りがちな就活」のパターンを3つ、データを参照しながら見てみましょう。
(1)「頼れるあの人」の意見に振り回される
就活は、誰でも初心者からのスタートです。親、先輩、OB、ゼミの教授から兄弟まで、さまざまな人に相談し、アドバイスを求めます。しかし、学生の相談先のリソースは限られています。就活に消極的な学生は特に、「相談できる」相手に話を聞きにいきがちです。調査結果からも、就活生が相談先を絞ってしまうと、情報が限定され、事前の理解を阻害していたことがわかりました。
【図3】は入社前理解の度合いを3分類し、相談先の種類で比較したものです。入社前理解が低い群は、1.2種類程度の相談先しか持っていませんでした。これでは情報が偏ってしまって当然です。
親、先輩など、「就活の経験者」から得られる体験談は貴重なものです。もちろん耳を傾ける価値のあるアドバイスもあります。しかし、そうした相談先から得られるのは、あくまで「過去」の、「その人から見た」情報であり助言です。「現在」の、「別の角度から見た」情報も積極的にとって多角的に見なければ、会社理解は進みません。
気を付けるべきは、特に就活生から若手社会人といった「若者」には、「助言したがる」大人も多いということです。その意見を「否定する」というよりも、いくつかの相談先を確保し、情報を「相対化」していくことがまずは大切です。
(2) 「とりあえず参加する」インターンシップ
就活において、ここ5年間で最も変化したことは、インターンシップへの参加率です。今やほとんどの就活生にとってインターンへの参加は必須の状況です。しかし、3年生の夏・冬のインターンに「とりあえず参加してみる」意識の学生が目立ちます。
分析を行うと、「目的・目標を設定して」インターンに参加し、積極的に「社員とのつながり」を得ることで、入社前の会社・適性理解が促進されていました。社員を通じて、「企業・職場の雰囲気を直接知る」ことが大切であり、そのためには「とりあえず会場にいる」スタンスではかなえられません。
現状では、インターンの「目標設定」を行えているのは学生の59%、「社員との継続的な人脈構築」ができている学生は31.4%にとどまっています。企業側も、人事担当者だけでなく、現場社員との触れ合い・交流の機会を多く持たせることで、リアリティ・ショックを事前に防止することができます。