どうやって、子どもの「主体性」を引き出すか?
――しかし、定期考査をやめたら、どうやって生徒の理解度を把握するのかという問題が生じますね。
工藤 はい。だから、私たちは、すべての生徒が効率的に学力を高められるように、学習システムの再構築を図りました。具体的には、定期考査をなくしたかわりに、単元テストを行うようにしたのです。
数学なら「比例と反比例」の単元が終わればテスト、社会科なら「中世の日本と世界」の単元が終わればてテストといった具合に、学習のまとまりごとに小テストを実施するのです。そして、単元テストは再チャレンジをすることができます。テストでうまくいかなかったらもう一回テスト受けていいですよ、と。ここが主体性を引き出す仕掛けになっているのです。
具体的にご説明しましょう。再テストは本人の希望で1回だけ受けられます。40点であろうが90点であろうが、本人がもう1回受けたいと言ったら受けられる仕組みにしています。そのとき、100点満点中70点だった生徒は、足りなかった30点分、自分が何がわからなかったのか調べて勉強します。
その30点分の「わからない」ことを「わかる」ようにするには何が必要か、と子どもたちは自分の頭で考えます。自分で調べるのか。調べてもわからなかったらどうするのか。じゃあ人に聞こう、誰に聞こうか、と、子どもは自分からアクションを起こす。このアクションが大事なのです。それこそが、「理解できていない部分」を一つずつわかるように学習することですし、それが、自分の生き方になっていくからです。
――単元テストをきっかけに「わからない」ことを「わかる」ようにする学習の喜びを感じてもらうことができるというわけですね。そして、学力測定は「実力テスト」で測定する、と。
そういうことです。単元テストで「わからない」ことを「わかる」ようにしたうえで、年に3回だった実力テストを5回に増やしました。実力テストは、出題範囲が事前に示されないため、一夜漬けの勉強のしようもありませんから、生徒たちの本当の学力を測ることができます。
これらの改革の成果も実感しています。麹町中学校では定期考査を廃止し、単元テストに切り替えたことで、生徒たちはこれまで以上に自分で考えて、よく勉強するようになりました。勉強時間が増えた子もいます。「自宅で机に向かっている時間が増えた」という喜びの声も保護者から聞こえてきます。
もちろん、効率的に学習できるようになった結果として、勉強時間が減ってもよいのです。いちばん大切なのは、子どもたちが自分の意思で主体的に学ぶことです。生徒たちの本質的な学びを促すことを第一に考えるべきなのです。