7月3日、ソニーの音楽配信サービス「Music Unlimited」がスタートした。同サービスは、ソニーミュージックエンタテインメント社をはじめ、レコード会社各社から提供を受けた、国内外の1000万曲を超える楽曲を、パソコンやスマートフォンを介して月額1480円で好きなだけ聴けるというものである。
またビクターエンタテインメント等のレコード会社各社も、これまでインターネット配信で実施してきた楽曲のコピー制限(DRM)を年内にも撤廃する方向だという。
前回の連載で、著作権法改正(違法ダウンロード罰則化)の話題に触れた。文中で、これらの動きがCD等のパッケージメディアの規制だけでなく、むしろスマホを軸とした新しい音楽サービスへの布石である可能性を指摘した。はからずもこの予想が的中したかのように、音楽業界が動いている。
別段驚くような話ではない。罰則化やパッケージメディアに対する対応があまりにも目立ったため見過ごされがちだったが、音楽業界そのものは、スマートフォン時代の音楽配信の在り方について、以前から検討を進めていたし、それに拍車をかけるような業績の悪化が発表されているのは、今年2月の本連載の記事でも取り上げた。状況証拠を並べて冷静に推理すれば、こうした展開は容易に読み解けたということだ。
ただ、著作権法改正に係る手続きが、あれだけ批判の対象となったのに、舌の根も乾かぬ内にこうした展開を矢継ぎ早に進めてくるというのは、予想できなかった。正直あまりに節操がないという印象である。楽曲ラインナップやサービス提供状況等に遅れやばらつきが見られる等、事業面でもやや拙速な印象が否めないが、それ以上に「すべてにおいて、ちょっとひどすぎる」と、少なくとも私は思う。
逆に言えば、恥や外聞を捨ててでも、スマートフォンの台頭を前提としたクラウド型の音楽配信サービスの移行に急がなければならない事情が、レコード会社各社にあったのだろう。うがった見方と言われるかもしれないが、これとて状況証拠を並べれば、そう読み解くのがむしろ自然だ。