次に、君主の頭脳がBの場合、君主は自分の頭ではどうすべきかの選択肢を大して深くは考えていないから、(4)具体的な選択肢にまで落とし込んだ提案をしてくれる人を欲することになる。もちろん、意思決定の後には(2)自分が決めたことを実直に遂行してくれる人が、この場合にも重宝される。

 さて、君主の頭脳がCならばどうであろうか。こういう君主は状況に身を任せて漂っているだけの存在である。環境に追い込まれて何かせざるを得なくなるまで何もしたくないので、普段は(5)一緒にいて気持ちのよい人を重用することになる。いわゆる“お友達”である。

下の者に「開かれすぎた」君主は
地位を脅かされる可能性も…

 さらにマキアヴェリは権力者におべっかを使い、ヨイショする、「お追従者」の問題を指摘している。自分の利益のために、君主にこびへつらう者を(そうだとわかっていても)よき者として認識してしまう問題である。これについては巧妙に避けなければならない。マキアヴェリが言うには、「お追従者から身を護る手段としては、真実を告げられても決して怒らないと人々に知ってもらうしかない」。

 ところが、誰もがその君主に真実を話しても構わないという状況をつくってしまうと、君主への尊敬の念が消えてしまう。下の者に率直に語ってもらうことのよさはわかりつつも、君主がそれをひとたび多くの人に許してしまうと、君主への尊敬の念がなくなり、統治に悪影響を及ぼすというのである。

 確かにそうだろう。下の者に何を言ってもいい自由を与えると、下手をすれば、下の者が見える限定された範囲での小さな良しあし(個人的損得)だけが重要視され、あっという間に自分の周囲は不満を言う者ばかりになる。そうすると、君主の威信は崩れ去る。君主の地位とは絶対的なものでなく、かくも脆弱なものなのである。

 では、ここで君主(上)から見て有用な人材をまとめておこう。

(1)正しい情報をタイムリーに伝えてくれる人
(2)自分が決めたことを実直に遂行してくれる人
(3)自分の意見の正しさについて(正しくない場合も含め)意見を表明してくれる人
(4)具体的な選択肢にまで落とし込んだ提案をしてくれる人
(5)一緒にいて気持ちのよい人

 それらとは別に「お追従者」もあるが、ここはいったん(5)のなかに含めて考えておきたい。