孫社長の評価は付き合う期間によって違う

朝倉 孫さんってどういう人ですか。と、よく聞かれると思いますが、あえて伺えれば(笑)。

安川 もちろん、よく聞かれます(笑)。社長室長に始まって、その後はソフトバンクテレコムやソフトバンクモバイルの役員など、好むと好まざるとにかかわらず、14年間毎週のように孫社長と何時間もミーティングしてきました。嫌がおうにも薫陶は受けてますよね。

 孫社長は付き合う期間が1カ月、3年、10年以上かによって、印象は全然違うと思います。1カ月ぐらいだと、「頭が相当よくて、事業に対する熱意がすごい。人として非常に温かいところがある」という印象でしょう。1~2年だと、「新ビジネスが好きで、飽きっぽいし、自分だけどんどん先にいっちゃって大変だ」とみえる。でも、10年以上になると、「ものすごく一貫してて、実はめちゃくちゃしつこいぞ」という評価になってくるんです(笑)。

朝倉 面白いですね。長い目でみると、その時々の思いつきでやってることじゃない、というのがわかるんですね。

安川 事業欲がすごく高いうえに、興味が次から次へとわくので、某銀行を買収してその後売却したり、放送局を買収しそうになってやめたり、瞬間で切り取ってみると「孫さんは、また飽きて別のことをやるんだ」と思われちゃうんですね。それだけ見ると、新しい面白そうな話に乗っていっているだけのように一見見えるんですけど、でも底流にはすごく長い時間軸で世の中の未来を極めて正確に見ている部分があるんです。

朝倉 つねに相当のリスクをとってこられている印象があります。

安川 たとえば、ナスダック市場を設立すると言ったときは、こないだまでソフトウェア流通や展示会をやっていた会社にできるのか、と社内も社外も懐疑的でした。結局は、日本の新興企業向け市場が立ち上がるきっかけにはなったけれども、始めた当初は、僕らは一つ間違えたらソフトバンクは潰れるんじゃいか、と思ってました。

「一つ間違えたら潰れるんじゃないかと思っていた」という安川さん

 日本テレコムを買収したときも、日本初のPureIPネットワークを作っている最中なのに、3000億円も借金のあるレガシーキャリアを今さら買わなきゃダメなの?と、みんな内心思いました。結果、優秀な人材がたくさんグループに加わって大成功だったのですが。

 また、当時は新規事業ばかりで会社は当然ながら毎年赤字ですから、みんな危機感持って毎晩おそくまで必死に働いていました。たとえて言えば、ものすごく細くて暗い道を、ほとんど明かりもないなかで300キロの猛スピードで走っている、みたいな感覚です。幹部はみんな、いつかでっかい岩に突然ぶつかって潰れるんじゃないか、いう危機意識をもってやってました。(後編につづく)