閉店は23時、オフィス街でも日曜営業
競合店の隙間を狙う効果的な販売を実施

——大手町店を訪れるお客様は独特で面白いですね。

山本 本に対してお金を惜しまないように感じます。まとめ買いをされても領収書をお願いされることがほとんどありません。18時以降にお客様が増えると言いましたが、とくに重視しているのは20時以降です。

 近隣の大型店が20時に閉店するので、そこに行けなかった人がこちらに流れてくる。22時以降もお客様はいらっしゃいます。閉店間際の23時に滑り込んでくる方も少なくありません。

——23時まで営業している書店はめずらしいですよね? 特別な理由があったのでしょうか?

山本 これは会長の方針です。今は日曜日も営業していますが、当初は店を閉めていました。ただ、オープンから1年ほど経ったとき、会長が日曜日の大手町を見て「日曜日も人がいるのか」と気がつきました。オフィス街のため、平日に比べるとどうしても人が減ってしまいますが、たしかに忙しいサラリーマンは休日も出勤しています。

 近隣大型店は日曜日に営業をしていないため、ほかの店が空いていないとき、取りこぼしているお客様を取り込んでいくという戦略です。そういった意味でも、日曜日に営業してアピールするというのは正しいと思います。日曜日に専門書が売れることもありますよ。

——朝も早くて夜も遅い。もちろん大変なことはたくさんあると思いますが、そのなかで「楽しい」と感じるときは?

山本 やっぱり自分で仕入れた書籍を売ることが目標であり、元々やりたいことでもあったので、思うように売れたときは特に楽しいですね。

——山本さんが考える「思うように売れたとき」というのは?

山本 私の「思うように」というのは、この店には当たり前に置いてあると思ってくれている商品を仕入れることができて、それが売れている状況です。

 ほかのお店がやっている「お客様に積極的に提案する」ということと比べるとレベルが落ちてしまうのかもしれませんが、うちのお店のように小規模で隙間を狙っている書店としては必要なことだと思っています。

 営業時間の都合や仕事が忙しくてゆっくりと探す時間がないなど、ほかのお店で「買おう」と思っていた商品を買えなくて、うちのお店では買うことができたお客様がいらっしゃったとしたら、それはお力になれているようですごく嬉しいです。