8月以降、さまざまな材料が交錯しているものの、基本的には「行き過ぎた利上げを背景に米連邦準備理事会(FRB)がハト派へ急旋回し、その結果として米金利とドルが全面的に低下する」というシナリオが着々と進んでいる最中だと考えて差し支えあるまい。
何をおいても「米金利が低下する」というのが金融取引の大前提であり、そうした中でドル円は上を目指せない。もともと順調に進んできたそうした基本シナリオが米中貿易戦争の激化や香港デモ、そして日韓関係の緊迫化なども相まって予定よりも早いペースで進ちょくしているという理解である。引き続き予測期間中(今後1年間)で1ドル=100円割れが視野に入るという筆者の基本認識は不変だ。
ところで、市況が荒れる中でもファンダメンタルズの動きにも目を配りたい。とりわけ物価動向に気になる動きも見られ始めている。8月9日に公表された米生産者物価指数(PPI)は食品とエネルギーを除くコアベースで前月比0.1%低下と、上昇を見込んでいた市場予想の中心(同0.1%上昇)を裏切る結果が示された。
コアPPIが前月比で下落するのは2年ぶりだ。なお、前年同月比では2.1%上昇となっているが、これも2年ぶりの小さな伸び幅だった。世界経済が減速する中、総需要が縮小しているため、物価の上流に当たるPPIの動きが鈍ってくるのは平仄(ひょうそく)が合う。
だが、トランプ米大統領の口先介入や中央銀行(FRB)の利下げ転換をもってしてもドル相場の高止まりが続いていることも事実であり、これが物価伸び悩みの一因となっている可能性がある。