米国第一主義の見直し米国の経済団体(ビジネス・ラウンドテーブル)は、株主第一主義を見直すと宣言しましたが、日本への影響とは? Photo:Michael Nagle/Getty Images

米国の経済界が「株主第一主義」を見直すようなので、これを歓迎したい。「グローバル・スタンダード」と称して米国の株主第一主義をまねてきた日本の経済界にも変化が期待できるからだ。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)

米国の経済界が方針を転換
「株主第一主義の見直し」を宣言

 米国の主要企業の経営者が所属する経済団体(ビジネス・ラウンドテーブル)は、株主第一主義を見直すと宣言した。今後は従業員の待遇など、さまざまなステークホルダーを重視するという。

 経済は冷たい頭と温かい心で動いているといわれるが、これまで優先されてきた冷たい頭に対し、温かい心が異議を唱えた、ということであろうか。

 冷たい頭で考えれば株式会社は株主の利益を追求するのが当然である一方、温かい心で考えれば株主利益の過度な追求は貧富の格差を拡大し、国民経済を疲弊させかねないので改めるべきだ、ということになる。

 もっとも、米国企業が本当に温かい心を冷たい頭に優先させて経営していくのか、筆者は若干懐疑的である。単に世論の批判をかわし、政府の規制強化を思いとどまらせるだけのリップサービスである可能性もある。

 結局、株主総会で経営者が選ばれるのだから、経営者としては株主以外のステークホルダーより株主の利益を優先するインセンティブが働くためだ。今後の推移を見守りたい。