非正規労働者は時給が低いことに加えて、雇用が安定しないため、男性の非正規労働者は結婚が難しいともいわれている。これも問題である。結婚や出産は、少子高齢化を食い止める観点から非常に重要であるのみならず、景気にも重要な要素であるからだ。

 下請け企業との関係を考える際は、長期的な発注が重要である。いつ発注が止まるか不安であれば、下請け企業は安心して設備投資をすることができない。だからこそ、長期的な発注が景気にとって重要になる。

 短期的な景気の面だけではない。下請けが機械化によって効率的に生産できるようになれば、長期的な日本経済の成長にとってもプラスである。

 メインバンクが借り手を支える機能も重要だ。不況期に一時的に赤字になった借り手をメインバンクが見放して清算してしまうようでは、景気の悪化を加速させてしまうからである。

 また、メインバンクの支援を受けた借り手が景気回復によって立ち直り、日本経済の発展に資するとすれば、これもマクロ経済への大きな貢献になるだろう。

日本の方針転換に
米国以上の効果を期待する理由

 日本企業の方が、米国企業よりも、はるかに「ステークホルダー重視」に回帰しやすいことは明るい材料である。

 そもそも経営者の中にはステークホルダー重視のマインドが残っている。従来から日本企業が終身雇用や下請け制度やメインバンク制度を採用してきたのは、ステークホルダーとウインーウインの関係を構築することによる自分へのメリットも感じていたからである。今回の米国の変化は、そうしたメリットを経営者たちに思い出させてくれるだろう。

 もう一つ、筆者が注目しているのは評判の影響である。米国では、従業員も下請けも借り手も、ドライに付き合う相手である。世の中の人もそう認識しているから、「あの会社はドライだ」といった批判は受けない。

 しかし、日本ではウエットな関係を重視する人も多いので、「あの会社はドライだ」という悪評が立ちやすい。そんな悪評が立つと、学生の就職で敬遠されたりメインバンクに選んでもらえなかったりするので、結局、企業が損をすることになる。

 それが分かっているから、企業としても評判を大事にしてステークホルダーとのウエットな関係を維持しようと努めるはずである。

 そうしたことから、筆者は日本企業が株主第一主義から「日本的経営」に回帰することを大いに期待しているのである。