このところ大学教授の不正が何かと話題になっている。東洋英和女学院の前院長は、自身の著書で架空の人物を捏造し、創価大学の経営学部教授の論文では盗用が見つかった。2014年にはSTAP細胞の不正が話題になったが、なぜ日本は論文や研究での不正が相次ぐのか。その理由を国立遺伝学研究所教授の有田正規氏に聞いてみた。(清談社 沼澤典史)
理系研究者の不正が
圧倒的に多い日本
昨今、日本では大学教授の不正が相次いでいる。学校法人東洋英和女学院の院長で、同学院大学教授だった深井智朗氏の著作に、複数の捏造(ねつぞう)や盗用が発覚した事件で、同学院は深井氏を懲戒解雇した。また、創価大学の経営学部教授も著書に他人の論文を盗用する不正行為があったとして、4月に依願退職している。
STAP細胞で話題になったように、これまでは理系の論文不正が目立っていた。有田氏によると、文系の論文での捏造は珍しいという。
「文系の論文において捏造はレアケースでしょう。特に架空の人物を捏造するのはありえない。最近は文理問わず論文の不正が相次いでいますが、実は日本は研究の不正大国。特に大学や研究職の構造上、理系では不正が起こりやすく、深刻な問題なんです」(有田氏、以下同)
まずは、日本が不正大国だという事実を見ていこう。
病理専門医の榎木英介氏の記事「サイエンス誌があぶり出す『医学研究不正大国』ニッポン」(Yahoo!ニュース2018年8月22日)によると、世界を代表する科学誌「Science」は、不正論文を報告するサイトRetraction Watch(リトラクションウオッチ)が作成した、撤回論文数の研究者別ランキングを引用し、研究論文全体の5%しか作成していない日本人が、撤回論文が多い研究者上位10人のうち半数の5人を占めることを指摘している。