公的年金は不払いで
民間保険に入るのは愚かだ

 さらに言えば、そうした「代表性ヒューリスティック」によって年金不信が募ってくると、多くのマスコミはそうした一般市民の印象に合うような報道をしようとする。つまり「年金はダメだ」「年金は信用できない」という印象をさらに増幅するような報道になりがちなのだ。

 自分が持っている意見や印象と異なることは、それが事実であっても受け入れたくない、聞きたくないという気持ちが強く、自分の考えに合う情報のみを受け入れたくなる心理のことを「確証バイアス」と言う。年金報道はまさにこの「確証バイアス」が生み出していると言ってもいいだろう。

 この確証バイアスは言わば「負の連鎖」と言ってもいいのだが、現実にはなかなかこれを解消するのは大変だろう。厚生労働省もそれなりに正しく情報を伝える努力はしているようだが、まだまだ正しい知識が広まっているとは言えない。ただ、厚生労働省が出しているサイト「いっしょに検証!公的年金」は非常に良くできていると思う。漫画仕立てでスムーズに読め、その後に詳しい解説も載っているし、何よりも流れが良いので一気に読める。厚生労働省の宣伝をするつもりはないが、このサイトは読んでおいて損はないだろう。

 言うまでもなく、公的年金は老後の生活を支える重要な柱の一つであり、最も土台とすべきものである。サラリーマンの場合は、年金保険料は給与天引きであるため、未納となって将来年金が受け取れなくなる心配はないが、自営業や非正規社員の人で国民年金を自分で納める必要のある人の中には、公的年金保険料を払っていない人たちもいる。

 もちろん、中には収入があまりにも少なくて、とても保険料が払えないという人も一定数いるだろうが、そういう場合は申請をすれば保険料を免除してもらえることもある。ところが払えるにもかかわらず、公的年金保険料は意図的に払わず、民間の個人年金保険に払い込んでいるという人もいるのだ。

 これはどう考えても不思議な現象だ。言うまでもなく、民間の保険は自分が払った保険料から保険会社の経費や利益を引いた分が支払いに充てられる。それは民間の営利企業なのだから当然だ。これに対して公的年金保険は、自分が出した保険料だけではなく、200兆円近くある年金の積立金に加え、税金も投入されるわけだから、こちらの方が有利であるのは明らかだ。

 にもかかわらず、公的年金保険料を払っていないというのは、年金に対する不信感があるからだろう。しかしながら、それは勘違いであり、不十分な認識に基づいた不信感なのである。筆者が30代の頃、今から30年以上も前から、「年金はいずれ破綻する」と言われ続けてきたが、実際には当時から比べて年金積立金は100兆円以上も増加しているというのが事実だ。

 時代の流れに合わせて制度が変わっていくのは当然だが、年金が破綻するとかもらえなくなるというのは大きな誤解だ。大事なことは、マスコミ等で報道されることをうのみにするのではなく、一次情報を自分で見に行ってきちんと判断することだろう。