2013年の景気に見る
政治的な重要性
米・中経済が減速する中、日本経済も減速ひいては後退する可能性があるのか、市場は警戒している。筆者は以下に見るように、「景気は2012年内は潜在成長率(当社推計:年率0.8%程度)を大きく上回るスピードで回復する一方、2013年前半には減速へ」と見ている。
また、実質GDPが2四半期連続で前期比マイナスとなる景気後退(いわゆるテクニカル・リセッション)の可能性は、2012年はもちろん2013年も小さいであろう。
しかし、仮に2013年を通じて景気が低迷、あるいはデフレ色が濃くなった場合には、2014年4月に消費税率を引き上げられない可能性もある。なぜならば、衆院で可決され参院に送付された消費増税関連法案には、法案が成立した後でも経済状況などを勘案して増税を停止できるという附則(附則第18条)が盛り込まれているからだ。
これが、2013年の景気を下支えしなくてはならないという見方を政府・与党内で強めつつある。こうした中、にわかに公共事業拡大論が強まっている。
以下では2012年内の景気展望を行ない、その後、2013年の景気の政治的側面を考えてみたい。
「3つの負のエネルギー」は
蓄積していない
景気分析をしていて常々感じる点は、景気は回復するときと同様に後退するときにもエネルギーを必要とするということ。具体的には「過剰在庫」「過剰設備」「過剰雇用」が景気後退のための「3つの負のエネルギー」となる。
この「3つの負のエネルギー」がどの程度蓄積されているか、つまり景気後退がどの程度起きやすい状況にあるかを測る上で、先週発表された6月調査日銀短観は極めて重要なメッセージを発した。
すなわち、日本経済においては「3つの負のエネルギー」は蓄積されるどころかむしろ減少している。2013年に向けての景気シナリオの選択肢は「回復」か「減速」かであって、「後退」は外しておいてよさそうだ。